すつ)” の例文
そのすつるところのものは、形体に属する財物か、または財にひとしき時間、心労にして、そのむくいとして得るものには、我が情を慰むるの愉快あり。
教育の目的 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「こはそぞろなり鷲郎ぬし、わがために主をすつる、その志は感謝かたじけなけれど、これ義に似て義にあらず、かへつて不忠の犬とならん。この儀は思ひ止まり給へ」「いやとよ、その心配こころづかいは無用なり。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
愈々いよいよ影法師の仕業に定まったるか、エヽ腹立はらだたし、我最早もはやすっきりと思い断ちて煩悩ぼんのう愛執あいしゅう一切すつべしと、胸には決定けつじょうしながら、なお一分いちぶんの未練残りて可愛かわゆければこそにらみつむる彫像、此時このとき雲収り
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これなお瞽者こしゃをして五色ごしきえらばしむるがごとし。いやしくもかの愚夫愚婦をして、おのおのその真とするものを信ぜしめば、ついに草鞋そうあい大王を拝するに至らん。これ手を拱して人をすつるの道なり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
苦痛くつううすらげるのはなんためか? 苦痛くつうひと完全くわんぜんむかはしむるものとふではいか、また人類じんるゐはたして丸藥ぐわんやくや、水藥すゐやくで、其苦痛そのくつううすらぐものなら、宗教しゆうけうや、哲學てつがく必要ひつえうくなつたとすつるにいたらう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
哲学てつがく必要ひつようくなったとすつるにいたろう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)