くれ)” の例文
髪の毛も大方は白髪しらがになるにつき心まで愚痴に相成候と見え、今年のくれには御地おんちへ参られるとは知りつつも、何とのう待遠にて、毎日ひにち指のみ折暮らし※
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
一と目三井寺こがるる胸をぬしは察してくれの鐘と、そのねやに忍んで打ち口説くどけど聞き入れざるを恨み、青年の袋の内へ銀製の名器を入れ置き、彼わが家宝を盗んだと訴え
贄川にえがわ、洗馬も過ぎて、ふもとの宿場までかかると、すでに陽はかげって、夕煙の這う往来に、軒ごとの燈火ともしびが、春のくれながら、なんともいえない山国のわびしさをまたたいている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白萩 あのくれの鐘は、寺の深いの底から湧いてくるといふは真かいなあ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
 法皇は草坐むしろにざし玉ひ終日庭上にはましまくれにいたりてむなしく本院へ還かへらせ玉へり。
親父おやぢといふは煙管パイプ旋盤細工ろくろざいくげふとして居るもので、とりく時から日のくれるまで旋盤ろくろまへうごいたことのない程の、ブリダアまちではめづらしい稼人かせぎにんであるから、兒童こどもところ承知しようちするはずもない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
 法皇は草坐むしろにざし玉ひ終日庭上にはましまくれにいたりてむなしく本院へ還かへらせ玉へり。
茫然ぼんやりと日のくれるまでうしてた。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)