春秋しゅんじゅう)” の例文
あれでこれから春秋しゅんじゅうの畳がえをしたり、新入りの子供のために机を買ってやったりできるから、和尚もよろこぶだろうと思った。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
春秋しゅんじゅう筆法ひっぽうを用いれば、明治何年ですか? 田川の大伯父、角町に交通不便をもたらし、中学校を○○町へ追う。ハッハヽヽ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
ながるる濠の水は春秋しゅんじゅうかわりなく、いまも、玲瓏れいろう秋のよいの半月にすんでいるが、人の手にともされると、つがれるあぶらは、おのずから転変てんぺんしている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は道義的批判の規準を示すものとしては春秋しゅんじゅうを推したが、事実を伝える史書としてはなんとしてもあきたらなかった。もっと事実が欲しい。教訓よりも事実が。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
僕は機械的にしゃべっているうちにだんだん病的な破壊慾を感じ、堯舜ぎょうしゅんを架空の人物にしたのは勿論、「春秋しゅんじゅう」の著者もずっと後の漢代の人だったことを話し出した。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
百千年の後に軽率な史家が春秋しゅんじゅうの筆法を真似て、東京市民をニヒリストの思想に導いた責任者の一つとして電気局を数えるような事が全くないとは限らないような気もする。
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば孔子こうしが『春秋しゅんじゅう』を書くに私心ししんをはさまなかったとは、『春秋』に出る人物を批評するに好きだからめる、しゃくにさわるから悪く書くというのでなく、好悪こうおは論外として
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ジェーンは義父ぎふ所天おっとの野心のために十八年の春秋しゅんじゅうを罪なくして惜気おしげもなく刑場に売った。にじられたる薔薇ばらしべより消え難きの遠く立ちて、今に至るまで史をひもとく者をゆかしがらせる。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちに自ら奮って『四書ししょ』の集註しゅうちゅうを読み、十五歳には『易書えきしょ』や『春秋しゅんじゅう』のたぐいにも通じるようになった。寒さ、暑さをいとわなかった独学の苦心が、それから十六、七歳のころまで続いた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
乞食こじきも色々のが来る。春秋しゅんじゅうの彼岸、三五月の節句せっく、盆なンどには、服装なりも小ざっぱりした女等が子供をおぶって、幾組も隊をなして陽気にやって来る。何処どこから来るのかと聞いたら、新宿しんじゅくからと云うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
春秋しゅんじゅうの世のならいです。一個一個の私的な恩怨おんえんなど、生涯持ってはいられません。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのおかげでわれわれはまくらを高くして眠っていられる。そして言論や行動の自由が許されている。春秋しゅんじゅうの筆法が今は行なわれないのであろう。そうでなければこんな事もうっかりは言われない。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
春秋しゅんじゅうに指を折り尽して、白頭はくとう呻吟しんぎんするのといえども、一生を回顧して、閲歴の波動を順次に点検し来るとき、かつては微光の臭骸しゅうがいれて、われを忘れし、拍手はくしゅきょうび起す事が出来よう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
春秋しゅんじゅうの粧いを見事にやってゆくのを変には思ったが、聞いてみると与力の奥様に貰ったとか、縫い仕事をして求めたとか、巧みに言ってぬけるので、そうかしらと、信じて少しも疑わない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、すませて、なるものか、いかに、春秋しゅんじゅうの道義はすたれりといっても」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修羅戦国しゅらせんごく春秋しゅんじゅうをよそに、おどしだには平和である。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、春秋しゅんじゅうです」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)