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斂
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おさ
ふりがな文庫
“
斂
(
おさ
)” の例文
「これは鬼神の食物を
斂
(
おさ
)
める処である、酒を花の下に置き、犬をそこここの樹下に繋いでから、時刻のくるまでここに隠れているがよい」
美女を盗む鬼神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
口上はいよいよ狼狽して、
為
(
せ
)
ん方を知らざりき。見物は
呆
(
あき
)
れ果てて息を
斂
(
おさ
)
め、満場
斉
(
ひと
)
しく
頭
(
こうべ
)
を
回
(
めぐ
)
らして太夫の
挙動
(
ふるまい
)
を打ち
瞶
(
まも
)
れり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
独眼龍
(
どくがんりゅう
)
などという
水滸伝
(
すいこでん
)
式の
渾名
(
あだな
)
を付けないでも、偉いことはたしかに判っている。その偉い人の骨は
瑞鳳殿
(
ずいほうでん
)
というのに
斂
(
おさ
)
められている。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
杉風が作りし句合の如き、なほ滑稽を離るる能はざりしも、言語の遊戯に属する滑稽は早く跡を
斂
(
おさ
)
めて、趣味の上の滑稽を主とするを見る。
古池の句の弁
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
実際またその頃から、女の旅をする者がめっきりと減った。
歌比丘尼
(
うたびくに
)
は市中の
売女
(
ばいた
)
となって、やがてまた跡を
斂
(
おさ
)
めてしまった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
竜樹身を
斂
(
おさ
)
め、王に依りて立つ。ここに於て始めて悟る、本の苦を為さんと欲して、徳を敗り身を
汙辱
(
おじょく
)
せりと。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そしてその一時涌き立った波が
忽
(
たちま
)
ち又
斂
(
おさ
)
まって、まだその時から二時間余りしか立たないのに、心は哲人の如くに平静になっている。己はこんな物とは予期していなかった。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
燕将
譚淵
(
たんえん
)
、
董中峰
(
とうちゅうほう
)
等
(
ら
)
、南将
荘得
(
そうとく
)
と戦って死し、南軍
亦
(
また
)
荘得
(
そうとく
)
、
楚知
(
そち
)
、
張皀旗
(
ちょうそうき
)
等を失う。日暮れ、
各
(
おのおの
)
兵を
斂
(
おさ
)
めて営に入る。燕王十余騎を以て庸の営に
逼
(
せま
)
って
野宿
(
やしゅく
)
す。天
明
(
あ
)
く、四面皆敵なり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その背部の
蓑毛
(
みのげ
)
を胸の方の房々の羽毛が逆に下から逆まきにかぶせているのは、ウソの身体の中で、一番
颯爽
(
さっそう
)
としているところだ。胸の羽毛は
斂
(
おさ
)
めた翼の
風切
(
かざき
)
りの上へまでぱらぱらとかぶさる。
木彫ウソを作った時
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
枕山が「二月二十日作」に曰く「天街塵斂静無風。羽衛煌煌晴旭中。満路哭声紛雨泣。霊輿今日入玄宮。」〔天街塵
斂
(
おさ
)
マリ静カニシテ風無シ/羽衛煌煌タリ晴旭ノ
中
(
うち
)
/満路ノ哭声紛雨ノゴトク泣キ/霊輿今日玄宮ニ入ル〕この日
霊輿
(
れいよ
)
は西丸矢来門より竹橋を
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
熱鬧
(
ねっとう
)
を
極
(
きわ
)
めたりし露店はことごとく形を
斂
(
おさ
)
めて、ただここかしこに見世物小屋の板囲いを
洩
(
も
)
るる
燈火
(
ともしび
)
は、かすかに宵のほどの
名残
(
なごり
)
を
留
(
とど
)
めつ。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
普通人の生活で言えば、手織物と称する
不細工
(
ぶさいく
)
でしかも丈夫な織物は、都会ではほとんと影を
斂
(
おさ
)
めて、いわゆる紡績の糸で織ったつやのある木綿ばかりが、
田舎
(
いなか
)
へまでも行き渡っている。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
それで不断の肝癪は全く
迹
(
あと
)
を
斂
(
おさ
)
めて、何事をも勘弁するようになっていた。
じいさんばあさん
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
簀
(
さく
)
を
易
(
か
)
え
机
(
き
)
を
按
(
お
)
き、花を
供
(
くう
)
し香を
焼
(
た
)
くような事は
僕婢
(
ぼくひ
)
の為すがままに任せていたが、僧を
喚
(
よ
)
び
柩
(
ひつぎ
)
に
斂
(
おさ
)
めることは、其命を下さなかったから誰も手をつけるものは無かった。一日過ぎ、二日過ぎた。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
傍聴者は声を
斂
(
おさ
)
めていよいよ耳を傾けぬ。威儀ある紳士とその老母とは最も粛然として死黙せり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
斂
漢検1級
部首:⽁
17画
“斂”を含む語句
苛斂誅求
収斂
苛斂
収斂性
収斂剤
収斂味
収斂級数
斂抑
斂縮
税斂
聚斂