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數分時
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すうふんじ
火は
瞬間に
處々落ち
窪んで
窶れた
屋根を
全く
包んで
畢つた。
卯平は
數分時の
前に
豫期しなかつた
此の
變事を
意識した
時殆んど
喪心して
庭に
倒れた。
更に
俄にごつと
立つた
風に
森の
梢の
葉は
散亂して
鮮かな
光を
保ちながら
空中に
閃いた。
數分時の
後世間は
忽ちに
暗澹たる
光に
包まれて
時雨がざあと
來た。
村落の
何處にも
晴衣の
姿を
見なく
成つた。
「そんぢやまあよかつた。
何しても
蒲團へ
寢かせた
方がえゝな、
暖まりせえすりや
段々よくなつぺから」
南の
亭主は
數分時の
前から
二人を
衷心より
狼狽せしめた
事件の
簡單な
説明を
聞いた
時いつた。