つかま)” の例文
与兵衛はさう考へながら、山の頂から真直まつすぐに川の方へ、の枝につかまりながら、つるすがりながら、大急ぎに急いで降りて行きました。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
突き当りの危く切り立った山の鼻の下で路が消えている、立て掛けた丸太を足懸りにして木の根につかまりながら攀じ上ると、崖の上に出た。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
砂糖さたうきたとき與吉よきちそのべとついたをおふくろくちのあたりへした。おしな與吉よきち兩手りやうてつかまへてねぶつてやつた。おしななべふたをとつて麁朶そだほのほかざしながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
男は、宛然まるで鷲が黄鳥うぐひすでもつかまへた様に、小さい藤野さんを小脇に抱へ込んでゐたが、美しい顔がグタリと前に垂れて、後には膝から下、雪の様に白い脚が二本、力もなくブラ/\してゐた。
二筋の血 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何うした事か山之助が足掛りを踏外したから、ずずうと蔦が切れたと見えて、両手につかまったなり谷底へ落ると、下には草が生えた谷地やちに成って居り、前はどっどと渦を巻いて細谷川が流れます
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「フム、ひと言尻ことばじりつかまへて反抗はんこうするんだな。」
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
中途の右側の段を成している所で、立木につかまりながら皆の下り終るのを待って、再び綱を下げる。今度は木があるので、身軽な中村君や私には楽であった。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
つかまつてたえだとこへびたとかつてあわくつておりべとおもつたつちんだから、いつでもはあえだなんざがさがさやつて天邊てつぺんはう呶鳴どなつたりなにつかしてたんだつけが
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
男は、宛然まるで鷲が黄鳥うぐひすでもつかまへた樣に、小さい藤野さんを小脇に抱へ込んでゐたが、美しい顏がグタリと前に垂れて、後には膝から下、雪の樣に白い脚が二本、力もなくブラ/\してゐた。
二筋の血 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
山「一生懸命につかまってお出でなさい」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
米躑躅こめつつじの類であろう、岩の襞に白い花を綴っているが、下を覗いただけで身顫いして引返した。東寄りの岩壁の間の急峻な空谷を草につかまりながら背向うしろむきにドッと辷り下りる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ぽしやぽしやと音を立てて行くと近い聲がはたと止つて何か知らぬが水へ飛び込むものがある。能く見ると底に吸ひついてゐる。そつと近づいて急に上から押へつけてつかまへた。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
何でもはじめは急な山腹を木につかまりながら無暗むやみ横搦よこがらみに下りた。谷らしい溝に出る。そこで助七が濡れ腐った落葉の塊を引掻廻して、十数疋の蚯蚓みみずを掘り出したことを覚えている。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
自分は一足さきに出拔けて振り返つて見たらお秋さんは背負子を負うた儘婆さん達に取り卷かれて話をして居る。たまたま谷底から出て來ると互に珍らしいのだ。つかまへて放されないのだらうと思つた。
炭焼のむすめ (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それから第二の岩峰と小さな峰を二つ越えて、崩れ易い岩につかまりながら急勾配を登り詰めた所は、第三の岩峰の頂上で、高さ二千二百九十米。入川谷に面した岩壁は百米余も直立している。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)