握太にぎりぶと)” の例文
ると、親父ちやん湯玉ゆだまはらつて、朱塗しゆぬりつて飛出とびだした、が握太にぎりぶと蒼筋あをすぢして、すね突張つツぱつて、髯旦ひげだんかたへ突立つツたつた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鼠色の行衣に籠手こて臑当すねあてと見まごう手甲てっこうに脚袢、胡桃の実程もある大粒の水晶の珠数をたすきのようにかけ、手に握太にぎりぶとの柄をすげた錫杖しゃくじょうを突き、背には重そうなおいを負うていた。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
と云うのはそういう私なる者が、その中学生時代に於て、所謂いわゆる硬派の不良少年として、桜の握太にぎりぶとのステッキをひっさげ、本郷通りを横行した、なつかしい経験があるからでもあります。
探偵文壇鳥瞰 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それもさ、刻んだのではないで、一本三ツ切にしたろうという握太にぎりぶとなのを横銜よこぐわえにしてやらかすのじゃ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それもさ、きざんだのではないで、一本いつぽんぎりにしたらうといふ握太にぎりぶとなのを横啣よこくはえにしてやらかすのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まくり手には、鉄の如意にょいかと思う、……しかも握太にぎりぶとにして、たけ一尺ばかりの木棍ぼくこんを、異様に削りまわした——はばかりなく申すことを許さるるならば、髣髴ほうふつとして、陽形ようけいなるを構えている。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左右さいうかへりみ、下男等げなんどもいひつけて、つてさした握太にぎりぶとつゑ二本にほん
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船頭が持つかいのような握太にぎりぶとな、短い杖をな、唇へあてて手をその上へ重ねて、あれじゃあ持重もちおもりがするだろう、鼻を乗せて、気だるそうな、退屈らしい、呼吸いきづかいも切なそうで、病後やみあがり見たような
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
愛吉は、握太にぎりぶとな柄を取って、べそを掻いた口許を上へらして
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)