くぢ)” の例文
げにこゝにいたり我は自らわが及ばざりしを認む、喜曲または悲曲の作者もそのテーマの難きに處してかくくぢけしことはあらじ 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれは此能力の為に、今日迄一図にものに向つて突進する勇気をくぢかれた。即かず離れず現状に立ちすくんでゐる事がしば/\あつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いや有難う、どうにかなりませう。骨が折れたのぢやないんだから——なに、一寸くぢいたゞけです。」そして彼は、また立上つて、足の方をためしてみた。
味も素ツ気もないこの返事に、深水は出鼻をくぢかれた形で、止むを得ず、「アハヽヽヽ」と笑つてみせた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
短かい間に一と身上しんしやうを築き上げた精悍せいかん無比な腕きゝでしたが、五十近くなるとさすがに氣がくぢけたらしく、近頃は慈悲善根と言つたやうな、誰でも暮しが樂になると考へつく
守りしかも天然の大力ありと雖も是を平常つねに顯さず仁義を專らになし強きをくぢき弱きを助け金銀ををしまず人の難儀なんぎを救ふ此故に大岡殿の吹擧すゐきよに預りて將軍家の御旗本おはたもととなり領地五百石を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
然るに、この貫一はどうか! 一端いつぱし男と生れながら、高が一婦いつぷの愛を失つたが為に、志をくぢいて一生を誤り、餓鬼がきの如き振舞ふるまひを為て恥とも思はず、非道を働いて暴利をむさぼるの外は何も知らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すぎ大木たいぼく西にしたふしたのでづしんとそこらをおそろしくゆるがしておしなにはよこたはつた。えだくぢけてそのさきにはつちをさくつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし乍ら僕自身の罪に惱みはしても、決してそれにくぢかれはしません。僕は僕を導き給ふ神を信じ、神が全能であると同時に正義であることを信じます。
ひややかな、熱のない調子で云はれたこの言葉は、屈辱を感じさせ、心をくぢくに十分であつた。若しも私が誇と怒りの心に從つてゐたのだつたら、直ぐにも彼の傍を立ち去つてゐたことだらう。