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持來
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もちきた
持來りし中に
蝦夷錦の
箸入花菱の紋付たる一角の
箸鼈甲の
簪などありしかば大岡殿是を見給ひ
即時に
金屋利兵衞を
附そひの
女が
粥の
膳を
持來りて
召上りますかと
問へば、いや/\と
頭をふりて
意氣地もなく
母の
膝へ
寄そひしが、
今日は
私の
年季が
明まするか、
歸る
事が
出來るで
御座んしやうかとて
問ひかけるに
増種々に手を
變云寄ゆゑ
夫喜八と申者
在中は御心に從ひては女の道
立申さずと一
寸遁れに
云拔けるを或時粂之進
茶を
汲せ
持來る其手を
捕らへ是程までに其方を
踏分々々彼お三婆の
方へ
到りぬ今日は
怪からぬ大雪にて
戸口へも出られずさぞ寒からんと存じ
師匠樣より
貰ひし酒を
寒凌ぎにもと少しなれど
持來りしとて
件の
徳利と
竹皮包を