手籠てごめ)” の例文
蝶吉はあたかも手籠てごめにされたもののごとく、三人がかりで身動きもさせない様子で、一にん柄杓ひしゃくを取って天窓あたまから水を浴びせておった。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
二人はつひに立ち上がつた、——お由利は危ふく手籠てごめにならうとしたことだらう。そこへお由利の身を案じて、權次がとび込んだ。
受けじと為るを手籠てごめに取せて、互に何も知らぬ顔して、木の間伝ひに泉水の麁朶橋そたばし近く寄る時、書院の静なるに夫の高笑たかわらひするが聞えぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おキンの私室を訪れて、これを手籠てごめにしたのが運の尽きさね。八十吉はその心構え細心な潜水夫だから、ガサツな水夫どもの酔いッぷりは肌に合わなかったろう。
「自分で云えないのか」と彼が云った、「すると卯之吉は、おまえを手籠てごめにでもしようとしたんだな」
しじみ河岸 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
というのは俊三以外の人間で、彼の手籠てごめになる人間は一人もいなかったし、俊三にしても、うっかり手を出すと、すぐに母に言いつけられるにきまっていたからである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
「面倒だ、やッつけましょう、可いや、手籠てごめが悪いという方がありゃ後でまた対手あいてになる、留めなすったって合点がってんしねえ、さあ、退け。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ね、親分、あの娘は銀之助に手籠てごめにされるところだつたんですね。それを助ける積りで、あの匕首で頸筋を刺したんでせう」
其節御前様の御腹立おんはらだち一層強く、私をば一打ひとうちに御手に懸け被下候くだされさふらはば、なまじひに今の苦艱くげん有之間敷これあるまじく、又さも無く候はば、いつそ御前様の手籠てごめにいづれの山奥へも御連れ被下候くだされさふらはば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
老婦人を載せたる車夫は不意の出来事に呆れて立ちしが、手籠てごめに逢わるるを見るに忍びず、「やい此奴こいつ等、何をしやがるんでえ。」と客贔屓びいき
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
往来の人に駆けて来て貰うもあったのでしょうが、十手捕縄を預かる身で、素姓も知れない者に、往来で手籠てごめにされるのを見られたくありません。
「これはね、駿河台のそれ猫股婆の車夫なんで、私が折よく乗合わせなかろうもんなら、光子様を手籠てごめにして連れて行く処でごぜえましたぜ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「命がけでお信を可愛がつて居る人間には違ひあるめえよ。お信は手籠てごめにされかけて、聲も出せずに居たんだ」
法学生の堕落したのが、上部を繕ってる衣を脱いだ狼と、虎とで引挟ひっぱさみ、縛って宙に釣ったよりは恐しい手籠てごめの仕方。そのまま歩き出した、一筋路。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
娘盛りの頃、強盜に手籠てごめにされさうになつて、銀簪ぎんかんざしで眼を突いて危ふいところをまぬがれたことがありました。
娘盛りの頃、強盗に手籠てごめにされそうになって、銀簪で眼を突いて危ういところをまぬかれたことがありました。
お藤は得三の手籠てごめにされて、遂には帯も解け広がりぬ。こは悲しやと半狂乱、ひしと人形にいだき附きて
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出して見ろ。帝都劇場の柳糸子が、元の良夫おっと——乞食のように落ちぶれ果てた丹波高一——に手籠てごめにされたと判ったら、東京中の新聞屋がどんなに喜ぶかわからない
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
車夫に手籠てごめにさせようなんて飛んでもないことを遊ばす処では連れて帰ってまたいじめようという御思慮おかんがえとしか思われません。それは貴女虫が過ぎると申すんです。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると船頭共せんどうどもが、「恁麽こんな惡僧あくそうつてるから龍神りうじんたゝるのにちがひない、はやうみなか投込なげこんで、此方人等こちとらたすからう。」とつてたかつて文覺もんがく手籠てごめにしようとする。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
手籠てごめなんか飛んでもねえ話で、現に昨夜も、喜三太とお百合が逢引して居た樣子ですよ、二階に寢て居る娘が階下したで父親の殺されるのも知らずに居る筈はないと思つたら
あの晩、お浜が、雨戸をしめに二階へ行くと、若旦那の勘次郎が手籠てごめにしようとしたんだ。
あの晩、お濱が、雨戸をしめに二階へ行くと、若旦那の勘次郎が手籠てごめにしようとしたんだ。
「平次、無禮だらう。浪人しても武士の端くれだ、その拙者を手籠てごめにするとは何事だ」
相手は東洲齋を手籠てごめにし——聲を出させない爲に、當て身位は喰はせたかも知れない、水落の急所が少しやられて居る、——それから猿轡で、手足を縛つて、拷問に取りかゝつたのだ
寿美子は黙ってその前に立って居りましたが、この恐ろしい手籠てごめの罠にちながら、不思議なことに驚きも騒ぎもせず、冷然として、小杉卓二の勝ち誇った顔を見詰めているのです。
清兵衞が手籠てごめにしさうになつたのを見ると、我慢が出來なくて突き刺したのだらう。
銭形平次捕物控:180 罠 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「聴くと何んでも、主持ちの武家がうっかり押込にでも入られて、手籠てごめにでもされようものなら、腹を切るか長のお暇になるか兎も角も、生涯人に顔を見せられないことになるんですってね」
「判らないよ、——だけど、これが欲しさに、立派な御用聞を手籠てごめにしたり、すたり者らしくない年増が、押掛嫁に來るところを見ると、餘程の品には違ひあるまい。斯うしようぢやないか、八」
「判らないよ、——だけど、これが欲しさに、立派な御用聞を手籠てごめにしたり、すたり者らしくない年増が、押掛嫁に来るところをみると、余程の品には違いあるまい。こうしようじゃないか、八」
「容易のことで手籠てごめにされる親分じゃありませんが」
「容易のことで手籠てごめにされる親分ぢやありませんが」