“房(へや)” の例文
「……私の汚れ物を皆入れてありますから、それを除(の)ける間、ちょっとお母さまのお房(へや)でお待ちしてくださいませ、すぐ執(と)り除けますから」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
既にして導かれてロオザが房(へや)に入るに、こゝも幌を垂れて日光を遮りたれば、外より入るものはその暗きに驚かんとす。
時々彼は立上つて房(へや)のなかを行つたり來たりする。わづか三歩半で向ふの壁につきあたるやうな房のなかなのだ。
盲目 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
張鴻業(ちょうこうぎょう)という人が秦淮(しんわい)へ行って、潘(はん)なにがしの家に寄寓していた。その房(へや)は河に面したところにあった。
処女の室は、まだ開かぬ花の内部である、闇(やみ)の中の白色である、閉じたる百合(ゆり)のひそやかな房(へや)で、太陽の光がのぞかぬうちは人がのぞいてはならないものである。
世の常ならば生面(せいめん)の客にさえ交わりを結びて、旅の憂(う)さを慰めあうが航海の習いなるに、微恙(びよう)にことよせて房(へや)のうちにのみ籠(こも)りて、同行の人々にも物言うことの少なきは
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
が、いつまでも、起き出てこないので、自身、房(へや)へ行ってみると、王進の母が、ゆうべ夜半(よなか)から持病をおこして、今朝もまだ、子の介抱にうめきを怺(こら)えている様子だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まずひまつぶしに適している。退屈な時には髯(ひげ)の数さえ勘定して見たくなる者だ。昔(むか)し獄に投ぜられた囚人の一人は無聊(ぶりょう)のあまり、房(へや)の壁に三角形を重ねて画(か)いてその日をくらしたと云う話がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
旅宿は狹けれど、猶おん身が憩はん程の房(へや)はあるべし。をぢ君の性急なるはおん身も兼ねて知れるならずや。この和睦(わぼく)をばわれ誓ひて成し遂ぐべしといふ。
彼は女のさがって往く房(へや)はどこだろうと考えたあげく、西房(せいぼう)の方へ往ってその窓から覗(のぞ)いた。東房(とうぼう)からさがって来た夫人が物悩ましそうに坐って耳を澄(す)ますようにしていた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
湖広に房山(ぼうざん)という高い山がある。山は甚だ嶮峻で、四面にたくさんの洞窟があって、それがあたかも房(へや)のような形をなしているので、房山と呼ばれることになったのである。
「お客人(まろうど)。あらためて、とくとお話し申したいことがおざる。茶なと煮て、わしの房(へや)でお待ちしておりますぞ。おそれいるが、伜めを連れて、あとよりお越しくださらぬか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の常ならば生面の客にさへ交を結びて、旅の憂さを慰めあふが航海の習なるに、微恙(びやう)にことよせて房(へや)の裡にのみ籠りて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨に頭のみ惱ましたればなり。
舞姫 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
その夜李張が家へ帰って寝ていると、その枕頭(まくらもと)へ青い衣(きもの)を着た小柄な秀才が来た。李張はこうして締め切ってある房(へや)の内へどうして入って来たろうと思って不審して見ていた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夫人は我側に寄りて、兼ねても聞き給ふならん、拿破里は少(わか)き人には危き地なりなど云ひ、猶何事をか告げんとせしに、フエデリゴも房(へや)より出でしかば、物語はこゝに絶えぬ。
世の常ならば生面(せいめん)の客にさへ交(まじはり)を結びて、旅の憂さを慰めあふが航海の習(ならひ)なるに、微恙(びやう)にことよせて房(へや)の裡(うち)にのみ籠(こも)りて、同行の人々にも物言ふことの少きは、人知らぬ恨に頭(かしら)のみ悩ましたればなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
暫くして房(へや)の中から
黄英 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)