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慊
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いや
銀之助は
静に
分れて
最早歩くのが
慊になり、車を飛ばして
自宅に帰つた。遅くなるとか、
閉めても
可いとか
房に言つたのを忘れて
了つたのである。
怠惰屋なぞになられて
堪るものか、
學校へ
行くのが
慊なら
櫻の
木の
皮を
剥すが
可いか、サア
如何だ
此大たわけめ!
彼奴が来ている、どうして彼奴は自分の先へ先へと
廻わるだろう、
忌ま
忌ましい奴だと
大に
癪に
触ったが、さりとて引返えすのはなお
慊だし、
如何してくれようと
彼奴が
來て
居る、どうして
彼奴は
自分の
先へ
先へと
廻はるだらう、
忌ま/\しい
奴だと
大に
癪に
觸つたが、さりとて
引返へすのは
猶ほ
慊だし、
如何して
呉れやうと
昨年の
夏も
他の
女中から
小田原のお
婿さんなど
嬲られて
居たのを
自分は
知つて
居る、あゝ
愈々さうだ! と
思ふと
僕は
慊になつてしまつた。
一口に
言へば、
海も
山もない、
沖の
大島、
彼れが
何だらう。