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愁然
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しうぜん
見て
餘所ながらなる
辭別愁然として居たる折早くも二
更の
鐘の
音は
耳元近く聞ゆるにぞ
時刻來りと立上り
音せぬ樣に
上草履を足に
穿つて我家を
傍に一
本、
榎を
植ゆ、
年經る
大樹鬱蒼と
繁茂りて、
晝も
梟の
威を
扶けて
鴉に
塒を
貸さず、
夜陰人靜まりて
一陣の
風枝を
拂へば、
愁然たる
聲ありておうおうと
唸くが
如し。
又餅を
炙りて
食ふ、
餅殆ど尽きて毎人唯二小片あるのみ、
到底飢を
医するに
足らざるを以て、衆談話の
勇気もなく、天を
仰で
直ちに
眼を
閉づ、其状恰も
愁然天に
訴ふるに
似たり