-
トップ
>
-
御緩
>
-
ごゆつく
また御
出掛ですか。よござんす。
洋燈は
私が気を
付けますから。——
小母さんが
先刻から
腹が
痛いつて
寐たんですが、
何大した事はないでせう。
御緩り
「
貴方恐入りますが、もう少し
御緩りお歩きなすつて下さいましな、私
呼吸が切れて……」
『
御緩り
様で、』と
左側の、
畳五十畳計りの、だゞつ
広い
帳場、……
真中に
大な
炉を
切つた、
其の
自在留の、ト
尾鰭を
刎ねた
鯉の
蔭から、でつぷり
肥つた
赤ら
顔を
出して
亭主が
言ふ。
さあ/\
御緩り
御拜をなさりまし、お
待ち
申しますとも、
私は。……
貴下、
手をお
灌ぎなさるなんのと、
可い
加減な
水惡戲をなさつて、
袂が
引摺ると
不可ません。さあ、
袖を
持ちませう。