御廚子みずし)” の例文
が、導かれて、御廚子みずしの前へ進んでからは——そういう小県が、かえって、どうかしないではいられなくなったのである。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戸張とばりを垂れた御廚子みずしわきに、造花つくりばな白蓮びゃくれんの、気高くおもかげ立つに、こうべを垂れて、引退ひきしりぞくこと二、三尺。心静かに四辺あたりを見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御廚子みずしの前に、深く蝋燭ろうそくを点じ、捧げてのち、女はくれないふさに手を掛けた。あかしをうけると、その姿は濃くなった。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふもとの西明寺の庫裡くりの棚では、大木魚の下に敷かれた、女持の提紙入ハンドバックを見たし、続いて、准胝観音じゅんでいかんのん御廚子みずしの前に、菩薩が求児擁護ぐうじようご結縁けちえんに、紅白の腹帯を据えた三方に
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それとても朧気おぼろげながら、彼処かしこなる本堂と、向って右のかたに唐戸一枚隔てたる夫人堂のおおいなる御廚子みずしうちに、あや几帳きちょうの蔭なりし、ひぎまずける幼きものには、すらすらと丈高う
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒棚くろだな御廚子みずし三棚みつだなうずたかきは、われら町家ちょうか雛壇ひなだんには打上うちあがり過ぎるであろう。箪笥たんす長持ながもち挟箱はさみばこ金高蒔絵きんたかまきえ銀金具ぎんかなぐ。小指ぐらいな抽斗ひきだしを開けると、中があかいのも美しい。
雛がたり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
出家は、真直まっすぐに御廚子みずしの前、かさかさと袈裟けさをずらして、たもとからマッチを出すと、伸上のびあがって御蝋おろうを点じ、ひたいたなそこを合わせたが、引返ひきかえしてもう一枚、たたずんだ人の前の戸を開けた。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
サラサラと金襴きんらんとばりを絞る、燦爛さんらんたる御廚子みずしのなかに尊きすがたこそ拝まれたれ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
サラサラと金襴きんらんとばりしぼる、燦爛さんらんたる御廚子みずしのなかにとうとすがたこそ拝まれたれ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いま、その御廚子みずしの前に、わずかに二三畳の破畳やれだたみの上に居るのである。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言いかけて、そっ御廚子みずしかたを見た。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)