御免蒙ごめんこうむ)” の例文
くわしく云うと、暇がかかるから、このくらいで御免蒙ごめんこうむって先へ進みます。現代の理想が美でなければ、善であろうか、愛であろうか。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうしてみると、あなた方は、ああ言う当人があんな人ならば、御免蒙ごめんこうむると言わるるかも知れぬが、私は一体、地が悪い、土台が悪いのです。
人格の養成 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「実は、これから、御存知の剣のお師匠、脇田先生へ、お顔出しいたそうとする途中でござりまする。いずれ、では、大恩寺前とやらへ——御免蒙ごめんこうむりまする」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
お登和は余計な事といわぬばかりに「それではともかくもこしらえておきましょう、大原さん御免蒙ごめんこうむります」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「家では御免蒙ごめんこうむりますよ。そんなにしてまで犬を貰って戴くこともないじゃありませんか?」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
このアイスランドがデンマーク領たることを御免蒙ごめんこうむり独立してしまってからは、イギリス軍やアメリカ軍の進駐となり、古い淋しいアイスランドは急に夜が明けたようににぎやかになった。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
御免蒙ごめんこうむろうよ。——金や女があり過ぎて、殺されそうな気がする人間なんか、俺は付き合いたくないよ、——そう言ってやるが宜い。百までも生きたいと思うなら、出家遁世でもするが宜いとな。
「僕もとにかく新聞記者ですよ。耳の痛いことは御免蒙ごめんこうむりますかね。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、見馴れぬものが少しでもあると、可恐こわがって近づかぬ。一日でも二日でも遠くの方へ退いている。もっとも、時にはこっちから、わざとおいでの儀を御免蒙ごめんこうむる事がある。物干ものほし蒲団ふとんを干す時である。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
先生は御免蒙ごめんこうむる、予は懸巻も畏くは大嫌い、真平御免まっぴらごめんだ。
それでみん御免蒙ごめんこうむって岡田より先へ食事を済ました。岡田はそれがこっちも勝手だといった風に、ひとぜんを控えてさかずきめ続けた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そいつは御免蒙ごめんこうむろう、向島じゃ縄張ちげえだ」
そんなこんなで好く眠られなかった朝、もう看病は御免蒙ごめんこうむるという気で、病院の方へ橋を渡った。すると病人はまだすやすや眠っていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「行ってもいいがね。どうせ今に御飯を食べる時に、いっしょになるはずになってるんだから、御免蒙ごめんこうむってその時にしようかと思ってるのよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
説明してやりたいが到底とうてい分る奴ではないから、まず一応の挨拶をして出来得る限り早く御免蒙ごめんこうむるにくはないと決心した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「なに、まあ御話し。もう小夜が帰る時分だから。寝たければわたしの方で御免蒙ごめんこうむって寝る。それにまだ話も残っているから」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
僕の頭にこういう影が射した時、すぐあとからいてあがって来る高木が、これじゃ暑くってたまらない、御免蒙ごめんこうむって雨防衣レインコートを脱ごうと云い出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頁が足らんからと云うて、おいそれとかめからい上る様では猫の沽券こけんにも関わる事だから是丈これだけ御免蒙ごめんこうむることに致した。
「……御免蒙ごめんこうむ度候たくそろ。もっとも事情の許す場合には御……」と云うのを投げ込む。「……はとうてい辛抱致しかね……」と云うのを裏返して見る。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この和歌山市から和歌の浦までちょっと使いに行って来いと言われた時に、出来得るなら誰しも御免蒙ごめんこうむりたい。
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世の中に泣くべき事がどれほどあると思う。隣りのお嬢さんが泣くのを拝見するのは面白い。これを記述するのも面白い。しかし同じように泣くのは御免蒙ごめんこうむりたい。
写生文 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そりゃ改めてまた伺いますが、何しろ今の御依頼だけは御免蒙ごめんこうむります。僕には僕の名誉がありますから。いくら兄さんのためだって、名誉まで犠牲にはできません」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もういやになったからこれで御免蒙ごめんこうむる。実は僕の先生の話しをしたいのだがね。よほど奇人で面白いのだから。しかし少々頭がいたいからこれで御勘弁を願おう。四月九日夜。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「失礼ですがちょっと御免蒙ごめんこうむります。——なにまだ伺いたい事があるから待っていて下さい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ハハハ呑気のんきなもんだ。喧嘩にも強そうだが、足の強いのにはおどろいたよ。君といっしょでなければ、きのうここまでくる勇気はなかったよ。実は途中で御免蒙ごめんこうむろうかと思った」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はこの通り背広で御免蒙ごめんこうむるような訳で、御話の面白さもまたこの服装の相違くらい懸隔けんかくしているかも知れませんから、まずその辺のところと思って辛抱してお聴きを願います。
中味と形式 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
受持の範囲をきめて名をつけるだけの事であります。私はごく単純に耳目を喜ばす美しいもの、美しい音くらいで御免蒙ごめんこうむります。もっとも美醜を通じて同範囲のものを入れます。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叔母も「じゃあたしは御免蒙ごめんこうむってお先へお湯に入ろう」と云いながら立ち上った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さりながら妙齢なる美人より申し込まれたるこの果し状を真平まっぴら御免蒙ごめんこうむると握りつぶす訳には行かない、いやしくも文明の教育を受けたる紳士が婦人に対する尊敬を失しては生涯しょうがいの不面目だし
自転車日記 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こうなると少々気の毒な感はあるが運動のためだから仕方がない。御免蒙ごめんこうむってたちまち前面へけ抜ける。君は惰性で急廻転が出来ないからやはりやむを得ず前進してくる。その鼻をなぐりつける。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また天才か、どうか天才呼ばわりだけは御免蒙ごめんこうむりたいね。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)