強欲ごうよく)” の例文
人々はこれを伝え聞いて、「左内が金をためているのは貪婪どんらん強欲ごうよくというようなたぐいではないのだ。ただ当世にはめずらしい一奇人なのだ」
ケーくん、ぼくは、人間にんげんがあまり強欲ごうよくなものだから、戦争せんそうをしたり、けんかをしたり、つみもない動物どうぶつまでころしたりするのだとおもうよ。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まあ、見ていさっせれ——牛方もなかなか粘りますぞ。いったい、角十は他の問屋よりも強欲ごうよくすぎるわなし。それがそもそも事の起こりですで。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひと口にいえば、夫婦とも陰険で強欲ごうよくなんです。賄賂わいろずきの金持ち泣かせ、貧民いじめというやつで、取柄とりえなしの文官だ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紅白粉べにおしろいまでつけて、ニヤリニヤリと岡っ引を迎えるといった肌合いの女——けちで無慈悲で、強欲ごうよくだった寅五郎と、生れ変って来ても気性の合いそうもない柄です。
人にしても、辞令じれいたくみ智識ちしき階級の狡猾ずるさはとりませんが、小供こどもや、無智むちな者などに露骨ろこつなワイルドな強欲ごうよく姦計かんけい見出みいだす時、それこそ氏の、漫画的興味は活躍かつやくする様に見えます。
「寺池は強欲ごうよくだ」
わたし人間にんげんになりたいとはおもいません。ほんとうに一ぴきのむしでもいいから、この強欲ごうよくこころ不正ふせいかんがえを、わたしからうばってください。そして、わたしむしにしてください。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
越後えちご越中えっちゅうの人足の世話から、御一行を迎えるまでの各宿の人々の心労と尽力とを見る目があったら、いかに強欲ごうよくな京都方の役人でもこんな暗い手は出せなかったはずであると語った。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ぜいたくなおんなゆびにはめた、指輪ゆびわについていたのだ。まあ、あすこをごらん、あんなにぴかぴかひかっているものがある。あれは、強欲ごうよくなじいさんが大事だいじにしまっておいた黄金こがねかたまりだ。
塩を載せた船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鉄砲てっぽうつのがうまいからって、いやがるのをむりにたし、とったとりはみんなげておきながら、鉄砲てっぽうがいたんだから、おかねで、弁償べんしょうせいと、どこにそんな強欲ごうよく家主やぬしさんがあろうか。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
ケーちゃん、ぼくも、おなじなんだよ。いままで、大人おとなたちの強欲ごうよくから、戦争せんそうこったんだ。自分じぶんにとってだけでなく、相手あいてにとってもとうと生命せいめいであるとったら、ころうことはできないはずだ。
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)