崛起くっき)” の例文
私の想像する新文学——そのころの新文学というと申すまでもなく尾崎紅葉おざきこうよう幸田露伴こうだろはん崛起くっきした時代で、二氏を始め美妙びみょう鴎外おうがい
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ツマリ「文学士春の屋おぼろ」のために崛起くっきしたので、坪内君かっせばあるいは小説を書く気には一生ならなかったかも知れぬ。
つばくろ岳、台原山の連脈が東沢乗越のっこしで一旦低下して更に餓鬼、唐沢の二山を崛起くっきしているが、此処から見た餓鬼岳の姿は素派すばらしいものである。
美ヶ原 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その鬼神の楼閣一下して、墻壁となるかと思われしが、また崛起くっきして楼閣を起し、二長瀑をく。右なるは三百尺、左なるは五百尺もやあらん。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
虁龍きりゅう高位に在りは建文帝をいう。山霊蔵するをゆるさず以下数句、燕王えんおう召出めしいだされしをいう。神龍氷湫より起るの句は、燕王崛起くっきの事をいう。い得てなり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
正義を基礎とする唯一のものたる民主国においても、時として一部が権力を壟断ろうだんすることがある。その時全部が崛起くっきし、権利回復の必要上武器を取るに至る。
「北側の山麓は広漠たる乾燥した砂礫の斜面で、そのふちにそって、極度に不毛の丘陵が崛起くっき」している。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
だが岸には港湾らしきものはない、なおその上に砂地の付近には、のこぎりの歯のような岩礁がんしょうがところどころに崛起くっきして、おしよせる波にものすごいあわをとばしている。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
それゆえ一朝事情が変ずれば勿ち雌伏したものは雄飛し、崛起くっきして第一のものを覆す。そうしてそれが調整する余地がなければその時に大抵個物は破壊される。個人は滅亡する。
錯覚自我説 (新字新仮名) / 辻潤(著)
モンテ・ファルコの山は平野から暗い空に崛起くっきしておごそかにこっちを見つめていた。
クララの出家 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さては和尚も苔むしたかと思われるほど、その逞しく巨大な姿は谷底に崛起くっきする岩石めき、まるまると盛りあがる額も頬も、垢にすすけて、黒々と岩肌の光沢こうたくを放つばかりであった。
閑山 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
余は群雄の崛起くっきをもってむしろ小盗の屏息を促すものだと考える。
ちかく水陸をかぎれる一帯の連山中に崛起くっきせる、御神楽嶽飯豊山おかぐらがたけいいとよさんの腰を十重二十重とえはたえめぐれる灰汁あくのごときもやは、揺曳ようえいしていただきのぼり、る見る天上にはびこりて、怪物などの今や時を得んずるにはあらざるかと
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
九十の老齢で今なお病を養いつつ女の頭領として仰がれる矢島楫子刀自やじまかじことじを初め今はとっくに鬼籍に入った木村鐙子とうこ夫人や中島湘烟なかじましょうえん夫人は皆当時に崛起くっきした。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
かえって八ヶ岳のような大火山を附近に崛起くっきせしめたのであろうと、贔負目ひいきめの大太鼓を叩いて置く。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
など崛起くっきし、南に連りて旭岳孤立す。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
果然、万年上田かずとしうえだ博士が帰朝して赤門派が崛起くっきすると硯友社の勢威が幾分か薄くなった。続いて早稲田派が新旗幟きしを建つるにいたって、硯友社はた更に幾分か勢力を削がれた。
急に悪沢の大岳を崛起くっきし、更に赤石山、聖岳となって、三千米以上の天空に大地の波頭を白く蹴上げ、余れる力に上河内岳をグイと引き起して、再び白峰山脈の後に没している。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
前は近く弥陀ヶ原の高原と並行して、其縁を限る大日岳の連嶺が奥大日、大日、小大日の諸峰を崛起くっきし、余脈を遠く西に走らせて、末は富山平原の上にただよう層雲の中に没している。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
かかる折から卒然崛起くっきして新文学の大旆たいはいを建てたは文学士春廼舎朧はるのやおぼろであった。
四方の英才俊髦しゅんぼう一時に崛起くっきして雄を競うていた。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)