小腰こごし)” の例文
立出たちいで見れば水はなく向ふのいへに話しの老人らうじん障子をひらきて書をよみゐたるに是なる可しと庭口にはぐちより進み入つゝ小腰こごしかゞまことに申し兼たれどもおみづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何度も荒田老に小腰こごしをかがめたあと、いかにもやむを得ないといった顔をして席についたが、それからも、しばらくは腰が落ちつかないふうだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
長羅は剣のさきで鹿の角を跳ねのけると、卑弥呼を見詰めたまま、飛びかかる虎のように小腰こごしかがめて忍び寄った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
きゃッ、きゃッ、きゃッ、おきゃッ、きゃア——まさるめでとうのうつかまつる、踊るが手もと立廻り、肩に小腰こごしをゆすり合わせ、と、ああふらりふらりとする。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どかりとこしをおろした縁台えんだいに、小腰こごしをかがめて近寄ちかよったのは、肝腎かんじんのおせんではなくて、雇女やといめのおきぬだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
慶良間けらまの或る島で祭の夜、白衣の祝女たちの行列の間をくぐって、小腰こごしをかがめて何べんか往来した紅衣こういの神が、後に村民ぼうの妻だったことをすっぱ抜かれて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
内玄関もあれば、車寄せの大玄関もある幽邃ゆうすいな庭園が紫折しおの向うに、広々と開けている。車が玄関へ滑り込むと、並んでいた大勢の女中が一斉に小腰こごしかがめる。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
船頭はくわえ煙管きせるの火をぽっつりあかく見せながら、小腰こごしに櫓を押した。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『首がねえな——』そういって一人が小腰こごしかがめて見ていましたが
(新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
小腰こごしをかがめて進み寄ると
と、小腰こごしをかがめました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
見るに間口まぐちは六七間奧行おくゆきも十間餘土藏どざうは二戸前あり聞しにまし大層たいそうなるくらし成りければ獨心中に歡び是程の暮しならば我等一人ぐらゐどのやうにも世話してれるならんと小腰こごし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
取り打ち連れ立ちて行きながら彼の旅人に打ち對ひ小腰こごしかゞめ偖々惡者に付られ難儀千萬の處貴君の御救ひにて何事なくまことに御禮は言葉に盡しがたしと慇懃いんぎんに禮をべつゝこの旅人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)