将棊しょうぎ)” の例文
旧字:將棊
「まア、食べてからにしようよ。何も僕は君の云うことは間違っていると云うんじゃないのだから。——君は将棊しょうぎを知ってますか。」
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
服装いでたちは、将棊しょうぎこまを大形に散らしたる紺縮みの浴衣ゆかたに、唐繻子とうじゅす繻珍しゅちんの昼夜帯をばゆるく引っ掛けに結びて、空色縮緬ちりめん蹴出けだしを微露ほのめかし、素足に吾妻下駄あずまげた
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへもし大西洋の彼方から、あのカラタール氏が爆弾のように飛込んで来ようものなら、彼等巨頭連の存在は一たまりもなく将棊しょうぎ倒しにされてしまうのだ。
叔母は笑って取り合ってくれません、そのうちに燈火あかりく、従兄弟とはさ将棊しょうぎをやるなどするうちにいつか紛れてしまいましたが、次の日は下男に送られすぐ家に帰りました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
北には小窓の頭が四、五十米もあろうと思われる将棊しょうぎの駒を幾つか横に並べ、それを真二つにち割ったような背面を谷の向う側に見せて、凄まじい赭色の大峭壁を懸けつらねている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
玉突は知らぬし、囲碁いご将棊しょうぎも何も知らぬ。芝居は此頃何かの行掛り上から少し見た事は見たが、自然と頭の下るような心持で見られる芝居は一つも無かった。面白いとは勿論もちろん思わぬ。
店のあきないを仕舞って緋の毛氈もうせんを敷き詰め、そこに町の年寄連が集って羽織袴で冗談を言いながら将棊しょうぎをさしている。やがて聞えて来る太鼓の音と神輿みこしを担ぐ若い衆の挙げるかけ声。
巴里祭 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
将棊しょうぎ、さては各種の賭博とばくに至るまで、とてもここには書き切れない程の、遊戯という遊戯は一つ残らず、娯楽百科全書という様な本まで買込んで、探し廻っては試みたのですが、職業同様
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
では何をするかと言えば、K君やS君に来てもらってトランプや将棊しょうぎひまをつぶしたり、組み立て細工ざいく木枕きまくらをして(これはここの名産です。)昼寝をしたりするだけです。五六日前の午後のことです。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
将棊しょうぎ同様慰み半分に発明し発見し得るだろうか。
立花さん、これが貴下あなたのぞみじゃないの、天下晴れて私とこの四阿で、あの時分九時半から毎晩のように遊びましたね。その通りにこうやって将棊しょうぎを一度さそうというのが。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
矢藤老人——ああ、年を取った伊作翁は、小浜屋が流転の前後——もともと世功を積んだ苦労人で、万事じょさいのない処で、将棊しょうぎは素人の二段の腕を持ち、碁は実際初段うてた。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
床店とこみせ筋向すじむこうが、やはりその荒物店あらものみせでありますところ戸外おもてへは水を打って、のき提灯ちょうちんにはまだ火をともさぬ、溝石みぞいしから往来へ縁台えんだいまたがせて、差向さしむかいに将棊しょうぎっています。はし附木つけぎ、おさだまりの奴で。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)