如法にょほう)” の例文
が、俺たちのす処は、退いて見ると、如法にょほうこれ下女下男の所為しょいだ。あめが下に何と烏ともあろうものが、大分権式を落すわけだな。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ということを憲法といい、また如法にょほうともいったそうであると。元弘年間の北条与党の僧兵のうちには、笹目憲法と名乗った坊主もある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜之助のために蛙を叩きつけられたような目に会い、幸い泥田であったとはいえ、手練しゅれんの人に如法にょほうに投げられたのですからたいの当りが手強てごわい。
やはり他の天部てんぶ夜叉部やしゃぶ等の修法の如くに、相伝を得て、次第により如法にょほうに修するものであろう。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
身を以て苦しみぬいたという外に回想すべき何物をもそこにうかがえないからである。如法にょほう黒闇こくあんがすべてを領していた。経過した一々の事象も内心に何らの写象をもとどめていない。
この娘の母もまたかつて川童の子を産みしことありという。二代や三代の因縁にはあらずという者もあり。この家も如法にょほうの豪家にて何の某という士族なり。村会議員をしたることもあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
夜は如法にょほうの闇に、昼もなお薄暗い洞窟のうちに端座して、ただ右の腕のみを、狂気のごとくに振っていた。市九郎にとって、右の腕を振ることのみが、彼の宗教的生活のすべてになってしまった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
が、俺たちの為すところは、退しりぞいて見ると、如法にょほうこれ下女下男の所為しょいだ。あめしたに何と烏ともあらうものが、大分権式けんしきを落すわけだな。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
恋に狂うた女と、凜々りりしい武士の魂に生きようとする男とは、しばし、如法にょほうやみに争い続けた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竜之助の武蔵太郎、これも如法にょほうに見納めて
さて、ところで、矢をつらぬいた都鳥を持つて、大島守登営とえいに及び、将軍家一覧の上にて、如法にょほう鎧櫃よろいびつに納めた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
如法にょほうやみ瞋恚しんい夜烏よがらす
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
素裸に腹帯をめて、途中川二つ渡って、伯父夫婦を見舞に来た、宿に着いたのは真夜中二時だ、と聞くさえ、その胆勇たんゆうほとんど人間の類でない、が、暴風ぼうふう強雨きょうう如法にょほう大闇黒中だいあんこくちゅう
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
僧都 いや、荒海を切って影をあらわすのは暴風雨あらしの折から。如法にょほうたいてい暗夜やみじゃに因って、見えるのは墓の船に、死骸しがいうごめ裸体はだかばかり。色ある女性にょしょうきぬなどは睫毛まつげにもかかりませぬ。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
西明寺さいみょうじ——もとこの寺は、松平氏が旧領石州から奉搬の伝来で、土地の町村に檀家だんかがない。従って盆暮のつけ届け、早い話がおとむらい一つない。如法にょほうの貧地で、堂も庫裡も荒れ放題。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その女学校の門を通過ぎた処に、以前は草鞋わらじでもら下げて売ったろう。葭簀張よしずばりながら二坪ばかりかこいを取った茶店が一張ひとはり。片側に立樹の茂った空地の森を風情にして、如法にょほうの婆さんが煮ばなを商う。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)