大丸髷おほまるまげ)” の例文
もう二十歳はたちにもなつて、大丸髷おほまるまげの赤い手柄てがらが可笑しい位なお靜が、平常ふだん可愛がられ過ぎて來たにしても、これは又あまりに他愛たわいがありません。
一軒いつけん煮染屋にしめやまへちて、買物かひものをして中年増ちうどしま大丸髷おほまるまげかみあまたんだる腕車くるまして、小僧こぞう三人さんにんむかうより來懸きかゝりしが、私語しごしていはく、ねえ、年明ねんあけだと。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
第五号教室のピヤノのわきに人待ち顔なる大丸髷おほまるまげの若き婦人は、外務書記官菅原道時の妻君銀子なり、扉しとやかに開かれて現はれたる美しき姿を見るより早く、嬉しげに立ち上がりつ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
父は歎息たんそくして、無理は無い、居愁ゐづらくもあらう、困つた中に成つたものよと暫時しばらく阿関おせきの顔を眺めしが、大丸髷おほまるまげ金輪きんわの根を巻きて黒縮緬くろちりめんの羽織何の惜しげもなく、我が娘ながらもいつしか調ふ奥様風
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女の話を訊かうとすると、其處へ大丸髷おほまるまげ四十前後の、恐ろしく若造りな女が出て來ました。
築地つきぢ二丁目の待合「浪の家」の帳場には、女将ぢよしやうお才の大丸髷おほまるまげ、頭上にきらめく電燈目掛けて煙草たばこ一と吹き、とこしなへにうそぶきつゝ「議会の解散、戦争の取沙汰とりざた、此の歳暮くれをマアうしろツて言ふんだねエ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ちゝ歎息たんそくして、無理むりい、居愁ゐづらくもあらう、こまつたなかつたものよと暫時しばらく阿關おせきかほながめしが、大丸髷おほまるまげ金輪きんわきて黒縮緬くろちりめん羽織はをりなんしげもなく、むすめながらもいつしか調とゝの奧樣風おくさまふう
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
気の知れぬと古人も言ひける麻布あざぶ本村ほんむらの草深き篠田長二のむさくろしき屋台に大丸髷おほまるまげの新女房……義理もヘチマも借金も踏み倒ふしの社会主義自由廃業の一手専売、耶蘇ヤソを棄てて妻を得たとの大涎おほよだれ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)