へき)” の例文
と、それからは一切、城門の鉄扉てっぴを閉じ、へきを高うし、殻の如くただ守っていた。しかし城塁の中ではこんどは不思議な現象がおこりだしていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ貴州きしゅう金竺きんちく長官司羅永菴しらえいあんへきに題したまえる七律二章の如き、皆しょうす可し。其二に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
下は白い砂を敷いた様な清潔な道が両へきいはから自然にしみ出る水があるのか少し湿つて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
喞筒ポンプの材料には初めへきの厚いガラスを用い、活栓にかたゴムを使用致しました。これは血液の流れ工合を外部から観察するためでありましたが、後には、喞筒ポンプも活栓も共に鋼鉄に致しました。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
猛悪な形相の猫鮫ねこざめ虎鮫とらざめが、血の気の失せた粘膜の、白い腹を見せて、通り魔の様にす早く眼界を横ぎり、時には深讐しんしゅうの目をいからせてガラスへきに突進し、それを食い破ろうとさえします。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わが家は煙突のへきの蔦かづら日ましに染みて煙立てにけり
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
やっと、ややおちついて四へきをみると、龍燈りゅうとう鳳燭ほうしょくの光は、みどり金色こんじきわし、二列となっている仙童女は、はた香瓶こうびんしゃく供華くげなどをささげていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが家は煙突のへきの蔦かづら日ましに染みて煙立てにけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ごうごうの地鳴りは鳴りやまず、一しんへきを裂き、また、山をふるッて、このため、龍虎山の全峰はえ、信江しんこう上饒じょうじょうの水は、あふれ捲いて、ふもとを呑むかと思われるほどだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵は、次々と、いかだを組んで、濁水を越え、打ち払っても打ち退けてもひるまずによじ登ってくる。うまの刻を過ぎる頃には、両軍の水つく屍にへきは泥血に染まり、濁水のほりも埋まるばかりに見えた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
民部のかんがえかたは、どういう絶望ぜつぼうへきつかっても、けっしてくるうことがなかった。情熱じょうねつの一方に走りがちな蔦之助つたのすけ小文治こぶんじは、それに、反省はんせいされはげまされて、ふたたび馬のにとび乗った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)