半可通はんかつう)” の例文
ふぐでなくても、無知な人間は無知のために、なにかでたおれる失態は、たくさんの例がある。無知と半可通はんかつうに与えられた宿命だ。
河豚は毒魚か (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
すると半可通はんかつうをふりまはすことは大使も予もお互ひ様である。仏蘭西フランスの大使クロオデル閣下、どうかしからずお読み下さい。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
似非風流えせふうりゅう半可通はんかつうやスノビズムの滑稽、あまりに興多からんことを求めて却って興をさます悲喜劇、そういったような題材のものの多くでは
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
軽躁浮薄けいそうふはく傍若無人ぼうじゃくぶじん、きいた風、半可通はんかつう、等あらゆるこの種の形容詞を用ゐてもなほ足らざるほどの厭味を備へて居つて
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
東京の帝國大學には、アイノ語學者を以て任ずる人もあるがすべてがバチエラの糟粕そうはくめてゐるものばかりで、それも半可通はんかつうに滿足してゐること。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
塵埃ほこりたかる時分にゃあ掘出しのある半可通はんかつうが、時代のついてるところが有りがてえなんてえんで買って行くか知れねえ、ハハハ。白丁はくちょう軽くなったナ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ただその言語動作が普通の半可通はんかつうのごとく、文切もんきがたの厭味を帯びてないのはいささかのでもあろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼というは堂々たる現代文士の一人いちにん、但し人の知らない別号を珍々先生という半可通はんかつうである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さなきだに婦人の性情には少し学問でもすると半可通はんかつうを振廻したがる悪習が潜んでおります。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
もし血気にはや半可通はんかつうが新式の自動車をり催して正面から乗りつけて行っても、「御紹介のないお客様は」の一点張りで、その来る者の、自動車であろうと、金鎖きんぐさりであろうと
もし人が、わが身の上におこるまじめながらの滑稽こっけいを知らないならば。また浮世の悲劇にとんじゃくもなく、浮かれ気分で騒ぐ半可通はんかつうを「あまり茶気があり過ぎる」と言って非難する。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
亜米利加アメリカの名探偵フィロ・ヴァンスみたいな半可通はんかつうとはシキが違うんだ。
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それに対する毀誉褒貶きよほうへんはまちまちで、在来の芝居を一途いちず荒唐無稽こうとうむけいののしっていたその当時のいわゆる知識階級と一部の半可通はんかつうとは、今後の演劇は当然こうならなければならないもののように賞讃した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
寿司通すしつうと自称他称する連中もたいていはいい加減な半可通はんかつうで、それならこそまた寿司屋も息をつけるというものである。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
むやみに縁語を入れたがる歌よみはむやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪きことおびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
そんなものよりは小説家の方が、まだしも道に近いやうな気がする。「尋仙未向碧山行せんをたづねていまだむかはずへきざんのかう住在人間足道情すんでじんかんにあるもだうじやうたる」かな。なんだか今夜は半可通はんかつうな独りごとばかり書いてしまつた。(十月二十日)
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は自分の眼前に見るこの二人、ことに小林を、むやみに新らしい芸術をふり廻したがる半可通はんかつうとして、最初から取扱っていた。彼はこの偏見プレジュジスの上へ、おつに識者ぶる彼らの態度を追加して眺めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むやみに縁語を入れたがる歌よみは、むやみに地口じぐち駄洒落だじゃれを並べたがる半可通はんかつうと同じく、御当人は大得意なれどもはたより見れば品の悪き事おびただしく候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
いわゆる半可通はんかつうという厄介者である。
良寛の書 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
何事にも半可通はんかつうといふ俗人あり。茶の道にても茶器の伝来を説きて価の高きを善しと思へる半可通少からず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)