午餐ひる)” の例文
『怎うもしないのに!』と自分に弁疏いひわけして見る傍から、「屹度加藤さんでお午餐ひるが出て、それから被来いらつしやる。」といふ考へが浮ぶ。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
午餐ひる勘次かんじもどつて、また口中こうちう粗剛こは飯粒めしつぶみながらはしつたあと與吉よきち鼻緒はなをゆるんだ下駄げたをから/\ときずつて學校がくかうからかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それがまだ昼前のことで、これから四谷へ行くは大変、お午餐ひるをたべてからというので、早昼食はやひるをたべて国さんは四谷へと出掛けて行きました。
ヤヲら振り返りつ「アハヽ村井さん、大分痛手を負ひましたナ、が、御安心なさい、此頃も午餐ひるつくゑで、主筆さんが社長さんと其の話してられましたよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
午餐ひるのお弁当を、あたくしが持って行きましたが、それはとうとう父の口に入らなかったのでした。
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんしろ今頃学校にいれば午餐ひるをすまして、運動場でキャッチボールでもしている時間でした。
午餐ひるがどんな御馳走だったか判らぬが、何れ小賄賂の意味で、出来る丈の珍味を並べたことだろう。今度は流石に今迄の様に変な女を御給仕に出すことは差控えたらしい。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
忠興は、重臣をあつめて、父子おやこの決意を告げ、それが終ると、初めて朝出たままの居間へ帰ったが、時刻はもう夕方に近いほどだった。朝食も午餐ひるも、忘れ果てていたのである。
「怎うもしないのに!」自分に辯疏して見る傍から、「屹度加藤さんで午餐ひるが出て、それから被來いらつしやる。」といふ考が浮ぶ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
午餐ひるうちものからもどつてめしべた。ちつとはどうだとおふくろすゝめられても勘次かんじたゞ俯伏うつぶしつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「……お午餐ひるを持ってまいりました。お客様、ここへお膳をお置きいたします」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
午餐ひるもおしなしくなかつた。自分じぶんでも今日けふあきなひられないとあきらめた。明日あすつたらばとおもつてた。しかしそれは空頼そらだのみであつた。おしな依然いぜんとしてまくらはなれられない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)