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十錢
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じつせん
此のまゝだと、もう
一音信の
料金を、と
言ふのであつた。たしか、
市内は
一音信金五錢で、
局待の
分ともで、
私は
十錢より
預つて
出なかつた。
値を
聞くと
三圓九十錢で、まあ、それは
先のよりは
安い。が、
此奴を
行きなり
女房は、
十錢値切つて、
三圓八十錢にお
負けなさいと
言つたんです。
「
十錢のを
二包、
二包ですよ——
可いかい。
其から、
十五錢のを
一包、
皆燒いたのをね。」
(すきなお
方と
相乘人力車、
暗いとこ
曳いてくれ、
車夫さん
十錢はずむ、
見かはす
顏に、その
手が、おつだね)——
恁う
云ふ
流行唄さへあつた。おつだね
節と
名題をあげたほどである。
「
道具屋の
女房は、
十錢値切つたのを
癪に
觸らせたのに
違ひない。」
それから
又別の
時、
手水鉢の
傍へ
置く、
手拭入れを
買ひに
行つて、それを
又十錢値切つたといふ
話がありますが、それはまあ
節略して——
何でも
値切るのは
十錢づゝ
値切るものだと
女房は
思つて
居る。