あにい)” の例文
へえ……まず此方こちらへお上りなさいまし、一切親類付合で、今ちょいとお酒が始まった処で、これから美代ちゃんのおあにいさまになるお方で
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「さうです。貴君あなたのおあにいさんの臨終に居合したたつた一人の人間は私です。お兄さんの遺言を聴いたたつた一人の人間も私です。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そしてその首をしっぽのそばにおいて、三べんお祈りをしますと、今まで馬の死骸だと思ったのが、ふいに気高けだかい若い王子になりました。それは王女のおあにいさまでした。
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それも、詰らなそうに、円い目で、貴婦人の顔をながめて、同一おなじようにそなたを向いたが、一向珍らしくない日本のあにいより、これは外国の小父さんの方が面白いから、あどけなく見入って傾く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それにもかかわらず、あにいに類似した言語は無論、尋常の竹箆返しっぺいがえしさえ控えたのは、——相手にならないと先方さき軽蔑けいべつしたためだろうか——あるいはこわくって何とも云う度胸がなかったんだろうか。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お部屋にいる又蔵さんという小粋なあにいさんなんですよ」
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ありますとも。おあにいさんの遺言と云ふのも、お兄さんを弄んだ婦人に対して、おあにいさんの恨みを伝へて呉れと云ふことだつたのです。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
森「そうじゃアねえ、亥太郎あにいと此の旦那と見附前で喧嘩をして、牢ゆきになったから気の毒だって、とっさんお前の所へ此の旦那が見舞みめえに来たのだ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
が、その婦人は、うらみを物の見事に跳ねつけてしまつたのです。そればかりでなく、死んだおあにいさんを辱めるやうなことまでも云つたのです。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
角「何うしてッて、もう魂消たまげた、実に不思議な縁さ、しかしあゝ気の毒なことだが、あんたのおあにいさん角右衞門様という人は、小川村に浪人して居るだが」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
徳「縁故の無い処に云うものか、当家のふみと血を分けたおあにいさまで大西徳藏という者だと云やア分る」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あれは暇を出すのがよろしい、彼奴あいつを置いては宜しくありませんとおあにいさまに申し上げな、是から田中、藤田の両家へも廻文かいぶんを出して、時藏、龜藏も暇を出させる積りだ
今じゃア此のからッぺたの恒あにいに削らせた釘を打ちなさるから、此ん通りでざまい、アハヽヽ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
森「亥太郎あにいか、そんな事を云っちゃア困るじゃねえか、お役人様、そりゃアわっちの仕業で」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わっちがね、六間堀の伯母が塩梅あんべえがわりいので、昨日きのう見舞に行って泊って、先刻さっきけえって見るとうち貸店かしだなになってるのサ、訳が分らねえから大屋さんへ行って聞いてみると、あにいが今朝早く来て
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
忠「御舎弟様の奥様が極って、おあにい様の奥様は何かきまったものはありませんか」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
道楽で御勘当になったという話をおっかさんが死ぬ前に私に申したんですよ、おあにいさんは家出をしてしまったッて、私が生れて間もない折ですよ、お兄さんにいさいすれば力に成ると思って
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
下婢「お実家さとはおあにいさまは銀行の頭取をなすって居らっしゃいますので」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今も國藏あにいが成田様の一件で小言まじりに一本やられたところだ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
兼「長あにいやしねえか」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)