えれ)” の例文
「知らねえと思ふ人間ふとに何故聞かつしやるだ。」と百姓は蟷螂かまきりのやうにくれた顔をあげた。「これはあ、索靖さくせいといふえれえ方の書だつぺ。」
此様こんな小せえ子に敵の討てる訳もなしするから、し剣術でも習いてえなら、私の御主人筋の人が剣術がえれえから其処そけへ往って稽古をさせてよ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
己はずんと一番えれえ人間だからこそここで船長になってるんだぞ。手前らにゃ分限紳士らしく勝負する気はねえんだ。
「ええ、最近に仮髪かつら師を一人拾いましてな。ちょっとした端役もやりますんで、それに、浅尾為十郎という、どえれえ名をくっつけましたんですが……」
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
えれえ! 眼がたけえ! 小判の隠場ア此処と眼をつけたんだからなア。…よし来た、そうなりゃアお互い相棒あいづれで行こう。……が相棒になるからにゃア……
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「勘さんか、」とに組は肩で呼吸いきをして、「や、えれえことになった。大鍋だいなべのお美野さんがお前——。」
「知っとる、知っとる。ほんに酒好きけんな。飲ますごっちなか。とてんえれえお爺さんのごたる。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「いや/\、左様さうい、何でもえれかたに成らしやつたと云ふ沙汰さたで御座りまする」と、老人は首打ち振り「が、先旦那様せんだんなさまも偉い方で御座りましたよ、二十年前に心配しなすつた通りに、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
お蚕様の時、えれえ働いたちゅうてうて呉れたのし。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
えれえなあ、おめえたちは」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多助どんとやらの意見で泥坊もたまげ、しおれ果てゝけえったはえれえ奉公人だねえ、わしたまげやした、年いまだわけいがねえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ううん、うちの旦那さまよりえれえ人があるかな?」と猟場番人は唸るように言った。「大地主さんがリヴジー先生に遠慮してものが言えねえなんて、そんなべらぼうな話があるもんか。」
えれえお方だ! 偉えお方だ!」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
官員さまのお姓名なめえかたってふてえ野郎だ……これ此処にござる布卷吉さんと云うのは、年イ未だ十五だが、えれえお人だ、忘れたか、両人ふたり共によく見ろ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「手前らは船をなくした。己は宝をめっけた。これじゃあだれがえれえ人間だい? で、もう己は辞職するぜ、畜生! さあ、もう手前らの好きな奴を選挙して船長にしろ。己はやめちまったんだ。」
わし江戸見物ちっと長くすれば、小遣になってしまうのだが、あんまえれえ奉公人で、襤褸ぼろて炭を担いでる人には珍らしいから、どうかこれを取って置いてお呉んなせえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)