供待ともまち)” の例文
もうおッつけ丑満うしみつだろうに、門内に、お客かごがあって、供待ともまちに、灯がついているので見ると、例の手で夜明しの客というわけか。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
青山へて見ると、玄関にくるまが二台程あつた。供待ともまちの車夫は蹴込けこみかゝつて眠つた儘、代助の通り過ぎるのを知らなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大手の下馬先げばさきは、朝から、動かない馬と駕籠と、供待ともまちの人間で、うずまっていた。——見渡すかぎりの人間の霞である。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御帰おかえりッ。」と書生が通ずれば、供待ともまちの車夫、つくぼうて直す駒下駄を、爪先に引懸ひっかけつ、ぞろりとつまを上げて車に乗るを、物蔭よりおはしたのぞきて、「いつ見ても水が垂るようだ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吹出ふきだしそうに可笑おかしい。又その和尚が正月になると大檀那だいだんなの家に年礼ねんれいに行くそのお供をすれば、坊さんが奥で酒でものんでる供待ともまちあいだに、供の者にも膳を出して雑煮ぞうになどわせる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たせてきてもかりしを供待ともまちちの雜沓ざつたふ遠慮ゑんりよして時間じかんはやめに吩咐いひつけかへせしものなんとしての相違さうゐぞやよもやわすれてぬにはあらじうちにても其通そのとほ何時いつまでむかさずにはかれまじ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
会衆は悉く散じ去つて、供待ともまちする俥も自動車一台も残つてゐなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
先ず深川永住町ながすみちょうへ出で、折柄其処に供待ともまちしていた、車夫宇田川三次郎(四十三)を嚇し、二人乗の俥を出させ、六道の辻まで曳かせて来たが、密告を恐れて三次郎を殺し、松田が三次郎の着物を着
すると、厩から玄関脇の供待ともまちへ通じる木戸の戸が少し開いている。はっと、何か物のの影に目先をかすめられたように、彼はそのまま表門の外まで出て行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
供待ともまちの車夫は蹴込けこみり懸って眠ったまま、代助の通り過ぎるのを知らなかった。座敷には梅子が新聞をひざの上へ乗せて、込み入った庭の緑をぼんやり眺めていた。これもぽかんと眠むそうであった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そんなら供待ともまちでお控えなさい。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いつも、帰宅するころには、やしきの郎党、木工助もくのすけ家貞が、かならず馬をひいて、迎えに来ているのが常なので、武者所の供待ともまちをのぞくと、清盛が、こまをひかえて、たたずんでいた。
と、赤埴源蔵あかはにげんぞうはつぶやいて、浅野家の供待ともまち小屋から腰を上げた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは、邸隅の輦宿くるまやどとよぶ供待ともまち小屋であった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、林の中の数寄屋の供待ともまちへ誘った。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
外の供待ともまちでひかえている。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)