作法さほう)” の例文
いずれも田舎侍いなかざむらいで、西洋料理などは見たことのない連中のみで、中には作法さほうを知らぬゆえ、いかなるご無礼ぶれいをせぬとも限らぬと、戦々兢々せんせんきょうきょうとし
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もと穴山梅雪あなやまばいせつ四天王してんのうのひとり佐分利五郎次、きさまの法師首ほうしくび剣先けんさきにかけて、亡主ぼうしゅ梅雪の回向えこうにしてくれる、一うちの作法さほうどおり人まじえをせずに、勝負をしろ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとわしのは、てきにかからないめの、わば武士ぶし作法さほうかなった自殺じさつであるから、つみいたってかるかったようで、したがって無自覚むじかく期間きかんもそうながくはなかったらしい。
それは昨日きのうの夕方顔のまっかなみのた大きな男が来て「知ってくべき日常にちじょう作法さほう。」
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこで、彼は、妻子家来を引き具して、白昼、修理の屋敷を立ち退いた。作法さほう通り、立ち退き先の所書きは、座敷の壁にってある。やりも、林右衛門自ら、小腋こわきにして、先に立った。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
みなぎり渡る湯煙りの、やわらかな光線を一分子ぶんしごとに含んで、薄紅うすくれないの暖かに見える奥に、ただよわす黒髪を雲とながして、あらん限りの背丈せたけを、すらりとした女の姿を見た時は、礼儀の、作法さほう
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
信者に道を伝うることはあれども、互いに厳重なる秘密を守り、その作法さほうにつきては親にも子にもいささかたりとも知らしめず。また寺とも僧とも少しも関係はなくて、在家ざいけの者のみのあつまりなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自分は行儀ぎょうぎを知らず、作法さほうが分からぬと、自分の弱点を知ったとても、人の前に出て、決しておくすることはない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
などのなかで、武家家族として共々にその家憲かけん作法さほう規矩のりにしばられていなければならなかったこの長い月日が、口にもいえぬ気苦労であったり、情けなさであったらしい。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世にはとかく、天真爛漫てんしんらんまんなどと称し、世に行わるる作法さほうに反するをもってこころよしとするものがある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「そうか、野武士のぶしでも、なかなか作法さほう心得こころえている。そちのうち食客しょっかくしているあいだ、じゅうぶんにいたわってとらせろ。そのうちに、なにか、適宜てきぎ処置しょちをとってつかわす」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これ、母衣組目付ほろぐみめつけの番組ぶれで、すべて武田流たけだりゅう作法さほうどおりにおこなわれるものと見える。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)