仲好なかよ)” の例文
ひょっとしたら、仲好なかよくして居たピンに子犬が生れたから、ミイが嫉妬して身を隠したのではあるまいか、などあられもない事まで思う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いよいよ夫婦が仲好なかよく暮すようにして、こんな手紙などてんで問題にならなかったと云う所を見せてやり、二人が同じようにリリーを可愛かわいがって
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
其処そこに息子と仲好なかよしの女達も沢山たくさん居て、かの女もその女達が可愛かわいくてひまさえあれば出掛でかけて行って紙つぶてを投げ合って遊んだことを懐しく想い出した。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
小さなときから、大へん仲好なかよしで、遊ぶにも魚をとるにも、またわなをかけに行くにも、いつも一しよでした。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
ソーニャ ねえ、本当のところを聞かせてくださらない、仲好なかよしになったんだから。……ママ、お仕合せ?
親族もい縁類も有るから少し足りないからと云えば是れへ往って才覚も出来る、女房も持ってるから融通も附きますと云うので、仲好なかよく其の年も経ちまして
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……従僕たちに問いただしてみる勇気は出なかったが、幸いわたしには、食堂係の若者でフィリップという仲好なかよしがいた。これは熱烈ねつれつな詩の愛好者で、またギターの名人だ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
それと同時に、彼は旅の道連れの心安さを幸いに、角田老人と仲好なかよしになることに全力を傾け、遂には、財産処分の相談相手とまで、彼の心を柔げることに成功したのでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
よしよし、おれはこれから、あの人と仲好なかよしにならう。しかし、向うはあんな立派な西洋館に住んでゐる女だ。おれのやうなこんなうちぢや、いらつしやいと言つても中々来ないだらうね。
一本足の兵隊 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
としからいえば五つのちがいはあったものの、おなじ王子おうじうまれたおさななじみの菊之丞きくのじょうとは、けしやっこ時分じぶんから、ひともうらやむ仲好なかよしにて、ままごとあそびの夫婦めおとにも、きちちゃんはあたいの旦那だんな
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
可笑おかしいことには、この花屋の兄弟はとても仲が悪くて、夏場だけはおたがい仲好なかよさそうに口をき合いながら商売をしているが、さて夏場が過ぎてしまうと、すぐに性懲しょうこりもなく喧嘩けんかをし始め
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そして、二人ふたりは、じきに仲好なかよしになってしまいました。
子供はばかでなかった (新字新仮名) / 小川未明(著)
何か奇蹟きせき的なことが起って、リリーと彼女とがすっかり仲好なかよしになっていたとしたら、———もしほんとうにそんな光景を見せられたら、焼餅やきもちを焼かずにいられるだろうか。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「そうされても、あたしいやじゃないの。……あたし、あなたの顔が気に入ったわ。あなたとは、仲好なかよしになれそうな気がするのよ。でもあたしは、あなたのお気にしまして?」
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
出た日を命日としておいでなさるくらいだから、済まん事とは知ってるが、奥に二人を隠して置くので、半治も小兼も嬉しがって仲好なかよくして居りますが、貴方には済まねえけれども
ついちゃいけないよ。……君の顔にちゃんと嘘ですって書いてあるのさ。一ぺん言い出したんだから、もうごまかしても駄目なんだよ。さ、言って御覧、会うんだろう? さ、小父さんと仲好なかよしになろう。
小波瀾 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ナオミがそれと話しているとはどう云う訳だろう? 彼等がみんなナオミをねらっているとしたら、何故なぜ喧嘩けんかが起らないのだろう? 昨夜もあんなに四人の男は仲好なかよくふざけていたじゃないか。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)