仕丁しちょう)” の例文
そうしているところへ、松本の町の方から、悠々閑々ゆうゆうかんかんとして、白木の長持をかついだ二人の仕丁しちょうがやって来ました。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(かつ面を脱ぐ)おっとあるわい。きゃッきゃッきゃッ。仕丁しちょうめが酒をわたくしするとあっては、御前おんまえ様、御機嫌むずかしかろう。猿がわざ御覧ごろうずれば仔細しさいない。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仕丁しちょうが大勢してそれをにないまいらせる。主上はまだあかるいうちに、花山院ノ内裏だいりを出られた。……が、天皇お一ト方ではない。女院、ご眷属けんぞくすべてである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
太刀たち持つわらべ、馬の口取り、仕丁しちょうどもを召連れ、馬上そでをからんで「時知らぬ山は富士の根」と詠じた情熱の詩人在原業平ありわらのなりひらも、流竄りゅうざんの途中に富士を見たのであった。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
お庭にはたき火でもしていそうな仕丁しちょう、古風な五人ばやし、すべて遠い昔のさまをあらわして、山の上に都を定めたころのおごそかでみやびた音楽も聞えてくるような気がします。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
悠々閑々たる仕丁しちょうは、そこで兵馬のために、八面大王の性質を物語りはじめました。こういう場合には、その悠々閑々の方が、話すにも、聞くにも、都合がよい。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また同日を期して、このたびの大戦大勝の賀をのべる貴顕きけんの馬やら車やらが混み合って、三条洞院とういんの四ツ辻に、仕丁しちょうたちの間で“くるま喧嘩”が起るほどな騒ぎだった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とのさばりかかり、手もなくだきすくめてつかみ行く。仕丁しちょう手伝い、牛の背にあおむけざまに置く。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
供奉ぐぶには、六衛府ろくえふの公卿、近衛の騎馬、舎人とねり仕丁しちょうから、窪所くぼしょの侍までみな盛装して従った。
(わななきながら八方はっぽう礼拝らいはいす。禰宜ねぎ仕丁しちょう、同じくそむけるかたを礼拝す。)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
導師の僧正は長者ノ輿こしに乗り、力者十二人がかつぎ、大童子、そば侍四人、仕丁しちょうらがつき添い、法橋ほっきょう以下の僧官やら一隊の侍やら、仲間ちゅうげん随聞ずいもん稚子ちごまで目をうばうばかり華麗な列だった。
一方より、神官代理鹿見宅膳しかみたくぜん小力士こりきし小烏風呂助こがらすふろすけと、前後あとさきに村のもの五人ばかり、烏帽子えぼし素袍すおう雑式ぞうしき仕丁しちょう扮装いでたちにて、一頭の真黒まっくろき大牛を率いて出づ。牛の手綱は、小力士これを取る。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名 白寮権現はくりょうごんげん媛神ひめがみ。(はたち余に見ゆ)神職。(榛貞臣はしばみさだおみ修験しゅげんの出)禰宜ねぎ。(布気田ふげた五郎次)老いたる禰宜。雑役の仕丁しちょう。(棚村たなむら久内)二十五座の太鼓の男。〆太鼓しめだいこの男。笛の男。おかめの面の男。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)