予々かねがね)” の例文
旧字:豫々
思想の宣伝でっ付けてやるのだと予々かねがね言って居て、随分自分も御説教を聞かされたものだ。夫でも虐待には熟々つくづくやり切れぬと見えて
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
何か不遜ふそんの言い方をするようですまぬが、彼らぐらいの程度の仕事に止まってはならぬというのが、私の予々かねがねねがいなのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
太刀さばきなつかしく、拝見致しましたが、——就ては拙者に千之助と申す伜が居ります、これに、梶派を教え度いと予々かねがね心掛けて居ったところ。
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして、健が四月に罷めると言ふのは予々かねがね聞いてゐた為であらう、それが若しや解職願ではあるまいかと思はれた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「これは予々かねがね捜索して居た、拐帯かいたい犯人の権堂賛之助です、本署へ電話をかけて護送の手続をして下さい」
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
その友人から予々かねがね日本の事情を聴いて居た惟敬は、身を立つる好機至れりとして、遊説の役を買って出たのである。八月末、平壌の城北乾福山かんぷくざんの麓に小西行長と会見した。
碧蹄館の戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
然し今になると先生が予々かねがね説教して聞かせて下さつたことが身に泌みて感じられとりまつしやろ
三田の縁日の晩に、予々かねがねほしいと思っていた長火鉢を買った時は、新吉もおときもすっかり興奮して、帰途はお互に話す声も高くなり、人通の少いところでは固く手を握合った。
果樹 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
初対面の時、私は自分も予々かねがね優美なロマンティストの生活を望んでいた旨を告げた。
外国人に誇れるものを造りたいと予々かねがね苦心をいたして居りましたわけでございます。
真珠塔の秘密 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
御噂おうわさ予々かねがね大井さんから、何かと承わって居りました。やはり御創作をなさいますそうで。その内に面白い物が出来ましたら、『城』の方へ頂きますから、どうかいつでも御遠慮なく。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
煙草の安い、競馬の大賭博がある、そして悪事を働いても逃場の多い上海シャンハイに違いない。弟は予々かねがね上海行を夢想していたが、こんな風にして落人おちうどとなってゆこうとは思いも寄らなかったろう。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
あなたの徳行とっこうと類い稀れな御人格については予々かねがねお噂をうかがっていたから、ぜひ一度お目にかかって親しく敬意を表したいと考えて参上した、というようなことを言おうと思ったのであるが
『気が合うというものだろう。三百五十石の小身から、諸侯の頭を抑える御側用人まで出世した出羽守と、高家の吉良とは、予々かねがね、親しい交際つきあいもして居るし、どこか、一脈通じるところがある』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或る時翁は藤堂伯(先代)から召されて「蝉丸」の道行の一調謡の御所望を受けたが、相手の小鼓は名にし負う故大倉利三郎氏で、予々かねがね翁の技倆を御存じの藤堂伯も非常な興味をもって傾聴された。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
うむ——綱手、予々かねがね申付けある通り、命も、操も、御家のためには捨てるのじゃぞ。又、こと露見して、いかようの責苦に逢おうとも、かまえて白状するな。敵わぬ時は舌を噛め、隙があれば咽喉を
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
そういう茶人たちのやった仕事ぶりに止まりたくないと予々かねがね念願している私にとっては、決して名誉ある比較ではないのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
秋山氏が、文壇での論戦などでも、自分自身のあふれるような才気に乗じて、常に相手を馬鹿ばかにしたような、おひゃらかしてしまうような態度に出ることは、信一郎は予々かねがね知っていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
予々かねがね世界を旅行するという事は私の大きな希望であった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
ところが求める者には与えられるのか、私があらた駒場こまばに居を決める直ぐ前に、予々かねがね日光街道で眼に入っていた一軒の石屋根長屋門が売りに出た。
野州の石屋根 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
禅は「不立文字ふりゅうもんじ」と申しますが、文字で分る区域など知れたものでありましょう。信仰をそんな知解にとどめてはならぬと予々かねがね宗門は教えているのではありませんか。
益子の絵土瓶 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
予々かねがね見たいとねがっていた焼絵の技もこの村で見ることが出来た。どんな鋭いこてであの微細な線を引くのか、どんな画工があのたくみな図取りを描くのか。凡ては予想を覆してしまった。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
とりわけ石器は予々かねがね私たちの求めていたもの、挽物と共にそれが全北のものであるのを知り得たのは悦びであった。私たちの心は早くもその産地へと動いた。石器は長水、木器は雲峰である。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)