下腹したばら)” の例文
……なんと、兩足りやうあしから、下腹したばらけて、棕櫚しゆろのみが、うよ/\ぞろ/\……赤蟻あかありれつつくつてる……わたし立窘たちすくみました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
私の下腹したばらには力がはいって来た。私の足の爪先は、静かに、伸び屈みしつつ進んで行った。それと共に、岩に擦りつけていた腹もいざって行った。
烏帽子岳の頂上 (新字新仮名) / 窪田空穂(著)
博士は、身ぶるいしながら、なべのお尻のように張り切ったる下腹したばらをおさえる。客は、そんなことにはおどろく様子もなく
肉屋もこれまで見たこともないきたならしい犬でした。骨ぐみは小さくもありませんが、どうしたのか、ひどくやせほそって、下腹したばらの皮もだらりとしなびさがっています。
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
成程乳房のだらりと垂れた工合から、下腹したばらのだらしなさ加減が、誰の眼にも子福者とは直ぐ判る。
金博士が暁の寒冷かんれいにはち切れそうなる下腹したばらをおさえて化粧室にとびこんだとたん、扉の蔭に隠忍待いんにんまちに待っていたその客は、鬼の首をとったような顔で
うさぎをどつて、仰向あふむけざまにひるがへし、妖気えうきめて朦朧まうろうとしたつきあかりに、前足まへあしあひだはだはさまつたとおもふと、きぬはづして掻取かいとりながら下腹したばらくゞつてよこけてた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何とかして高飛車たかびしやに出てやらうと、幾度いくたび下腹したばらに力を入れてみたが、その都度お爺さんが自慢さうに扱いてゐる銀のやうな長い髯が目につくので、他愛たあいもない詰らぬ事を言つてしまつて
熱いつゆ下腹したばらへ、たらたらとみたところから、一睡ひとねむりして目が覚めると、きやきや痛み出して、やがて吐くやら、くだすやら、尾籠びろうなお話だが七顛八倒しちてんはっとうよくも生きていられた事と、今でも思うです。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのは余り遅くまで話し込んだので、私もそこに泊り合せる事になつたが、さて寝衣ねまきを着替へようといふ時、私は氏が痩せた下腹したばらんだか得体のわからない物を捲きつけてゐるのを見つけた。
下腹したばらで猫がく7・15(夕)