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一刻
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いっとき
ふりがな文庫
“
一刻
(
いっとき
)” の例文
藤枝蔵人老人が三河屋を出たのは、それから
一刻
(
いっとき
)
(二時間)も後——ツイ二三町の自分の家へ帰ったのは、
戌刻
(
いつつ
)
半(九時)過ぎ——。
銭形平次捕物控:087 敵討果てて
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「——
一刻
(
いっとき
)
ばかりが大事なところだ、おれも今すぐに出向くから、持場を離れずに
撓
(
た
)
めていてくれ。日ごろの稽古を試すのは今宵だぞ」
八寒道中
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
つけてやって来たんだ、——じゃあ済まねえがおらあ直ぐ橋場へ知らせるから、
一刻
(
いっとき
)
ばかりうちに葉名家の方へ来てくんねえ
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「何が可愛い、そんなに可愛けりゃ、くれてやるから伴れて往け。きさまのような
不義者
(
ふぎもの
)
は、
一刻
(
いっとき
)
もおくことはできん、さっさと出て往ってくれ」
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
なにしろ、こんな薄気味の悪いところは
一刻
(
いっとき
)
も早く逃げ出したいと思ったが、どこからどう抜け出していいか、彼女にはとても方角が立たなかった。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
まあ、あなたが自分でやってごらんなさい。わたくしはもう恐ろしくって、この船に
一刻
(
いっとき
)
も乗ってはいられません。
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
何かに役立たないものでもない。それにしても城を出て、ものの
一刻
(
いっとき
)
と経たないうちに、こんな事件にぶつかるなんて、なんて世間は面白いんだろう。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
この
一刻
(
いっとき
)
だけは、かりにもその源三郎を見おろして、きめつけることができるのですから、イヤ主水正、大人気もなく、ついいい心持ちになっちゃって
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一刻
(
いっとき
)
おくれりゃ、一刻よけいあの親子が、むごたらしい敬四郎の責め
折檻
(
せっかん
)
を受けなきゃならねえんだ。早くしな
右門捕物帖:33 死人ぶろ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
くたくたになって二階の四畳半で、
一刻
(
いっとき
)
うとうとしたかと思うと、もう眼覚しがジジ……と鳴った。
わが町
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
追っかけて
冥土
(
めいど
)
まで、……いやさ、日暮里まで行く。……早打駕籠を二挺、押棒をつけて持って来い。……後先へ五人ずつ喰っついて、宙を飛ばして行け。棺桶は、もう
一刻
(
いっとき
)
前に芝を
顎十郎捕物帳:06 三人目
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「じゃ、お前はここで、待っていておくれ。
一刻
(
いっとき
)
か
二刻
(
ふたとき
)
で、皆帰ってくるからね。」
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「そんなものではない。日本人より、遥かに、利口な奴で、只今申した黒船の如きは、帆前船は、風をたよりで動かすが、あれは、石炭を焚いて、風が無くても、
一刻
(
いっとき
)
に、十里、二十里と走る」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
その
一刻
(
いっとき
)
のがれもいいだろうが、このあたしにゃあ通らないよ、なぜと言って、お前は三斎の娘御の、お局さまを、どん底までたらし込んでいるというではないか——見通しの、あたしの目を
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
一刻
(
いっとき
)
ばかりして、彼がその居酒屋を出た時は、もう
子
(
ね
)
の刻に近かった。が、彼はすぐに両国の方へ引返そうとはしないで、何と思ったか、元来た坂本の道を真直に千住の大橋に向って歩きだした。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
私は
一刻
(
いっとき
)
も早く、
速
(
すみやか
)
に死にたくなった。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この晩は双方から頼み込まれて、特に銭形の平次が乗り出し、宵から嫁の姿を見張って
一刻
(
いっとき
)
も綿帽子から眼を離さなかったのです。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
一刻
(
いっとき
)
ばかりたつと、どこの部屋もあらかた寝静まったらしく、風呂の湯を落す音と、
不寝
(
ねず
)
の番のあくびよりほかは聞こえなくなる。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
十兵衛は出立するまえに訪ねて来て、
一刻
(
いっとき
)
あまりも半三郎に意見をし、自分が帰って来るときまでにしっかり立ち直ってくれ、と云っていった。
あだこ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
主人の方はそれから
一刻
(
いっとき
)
ほどして起きられるようになりましたが、文阿と半兵衛の姿はどうしても見付かりません。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これだけは
一刻
(
いっとき
)
も、そばを離さず、こうして
外出
(
そとで
)
にも、駕籠へ入れて持ち歩いているものとみえる。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
廓をひかえて
夜更
(
おそ
)
くまで客があり、看板を入れる頃はもう東の空が
紫色
(
むらさきいろ
)
に変っていた。くたくたになって二階の四畳半で
一刻
(
いっとき
)
うとうとしたかと思うと、もう目覚ましがジジーと鳴った。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
この世を逃げても、せめてご先祖だけはいっしょにと、位牌を背負ってとっ走ったにちげえねえよ。山へ入れたら指をくわえなくちゃならねえ! まだとっ走って
一刻
(
いっとき
)
とはたつめえから、早だッ。
右門捕物帖:31 毒を抱く女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
「ま、行こう。
一刻
(
いっとき
)
、遅れると、一刻の損になる」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
この晩は双方から頼み込まれて、特に銭形の平次が乗り出し、宵から嫁の姿を見張って
一刻
(
いっとき
)
も綿帽子から眼を離さなかったのです。
銭形平次捕物控:010 七人の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いや、
悶
(
もだ
)
える力すらも、今は
一刻
(
いっとき
)
ごとに、その肉体から
失
(
な
)
くなって行くのだ。彼は、コツコツと、自分の心臓をたたく死の音に恐怖した。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この世にゃあへえ、男が本気になって怒るようなこたあ、から一つもねえだよ、怒ると腎の臓が
草臥
(
くたび
)
れるだ、いちど怒ると時間にして
一刻
(
いっとき
)
が命を
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もとの座敷へ戻ると、お蝶はまた
一刻
(
いっとき
)
ばかりの休息をあたえられた。女たちは草双紙などを持って来て貸してくれた。午飯がすむと、一人の女が来て琴をひいた。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「べらぼうめ、くせえとにらんだらあの青娘、案の定これだ、夜ふけにはまだ
一刻
(
いっとき
)
近くはあろう。おいらがおじきじきに立ちん坊しちゃもったいねえや。わら人形でも見つけようぜ。ついてきなよ」
右門捕物帖:37 血の降るへや
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それから
一刻
(
いっとき
)
、二時間ののちに。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
一刻
(
いっとき
)
(二時間)の後には野次馬もすっかり散り、永村長十郎も「東海坊の弟子どもや世話人一統は追っての御沙汰を待つように」
銭形平次捕物控:111 火遁の術
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
地の底には、一息のうめき声のほか、何も聞えなかったが、地上はそれからの
一刻
(
いっとき
)
を、あわただしい人声や跫音に
更
(
ふ
)
けていた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
音曲のほうもそれと同じことで、五日に一度ずつ木戸から四人でかけてゆき、正内老人の住居で
一刻
(
いっとき
)
半演奏をする。
ちくしょう谷
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
もうこうなったら娘をかかえて
一刻
(
いっとき
)
も早くこんな化け物屋敷を逃げ出すよりほかあるまいと、お道はもう夫のことも自分のことも振り返っている余裕がなくなった。
半七捕物帳:01 お文の魂
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それも
一刻
(
いっとき
)
や二刻の短い時間ではないので、品川浜の海波にほのぼのとして晩景の迫ってきた時分まで、ぐっすり眠りつづけていたようでしたが、と——ようやく起き上がると、そこに寝もやらで
右門捕物帖:13 足のある幽霊
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
府中までは
一刻
(
いっとき
)
を要さない。秀吉は久太郎秀政を先駆させて、先鋒のうちに在った。はや城壁が見える。城方の緊迫はいうまでもなかろう。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ガラッ八が帰って来たのは、それから
一刻
(
いっとき
)
(二時間)ばかり経った時分、四方はすっかり暗くなって乞食の死体も取り片付けてしまってからでした。
銭形平次捕物控:023 血潮と糠
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一刻
(
いっとき
)
ばかりも経った頃、女中のおさとが栄三郎のそばへ来て、おつるにあとの座敷が掛って来たと告げた。
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから
一刻
(
いっとき
)
あまりを過ぎて、孫十郎が奥で
午飯
(
ひるめし
)
をくっていると、小僧が店からはいって来た。
半七捕物帳:42 仮面
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「
一刻
(
いっとき
)
ほどまえに一丁通りおった。それがどうしたのじゃ」
右門捕物帖:31 毒を抱く女
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
せめて、御最期の
一刻
(
いっとき
)
だけでも、ここにいる者はみな一心同体ぞと、人を信じ、世を信じ、お
潔
(
いさぎよ
)
く、また安らけく、死出のお
門立
(
かどた
)
ち遊ばしませ
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから
一刻
(
いっとき
)
あまり、橋の上の往来の全く絶えた頃、浜町の方から、月下の橋へ急ぎ足に差しかかった娘があります。
銭形平次捕物控:058 身投げする女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
一番、二番と進んで、
一刻
(
いっとき
)
ほどのちには、三羽烏の
一人
(
いちにん
)
沼田軍十郎と伊丹兵右衛門の二人が勝ち残った。
半化け又平
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「それよりほかにしようはありますまい。わたしに出来ることならば何でも手伝いをいたしますから、どうぞ
一刻
(
いっとき
)
も早くそのお鷹を探し出してください。わたしからもくれぐれもお願い申します」
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一刻
(
いっとき
)
! 二刻! そして四半刻——。
右門捕物帖:24 のろいのわら人形
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
一刻
(
いっとき
)
でも、半日でも、
鬱々
(
くよくよ
)
しちゃあ損だ。おたがい様に、死ぬなら笑って死のうじゃありませんか。花見に行って、
蹴
(
け
)
つまずいて死ぬ奴すらある。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真物
(
ほんもの
)
の聟は陽が暮れるとすぐここに来ているが、
肝腎
(
かんじん
)
の嫁の支度が出来ない。三三九度はいずれ
一刻
(
いっとき
)
も後のことだろう、その時はお客様で
鱈腹
(
たらふく
)
呑むがいい
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
久しぶりで店があいたので、おせんは
一刻
(
いっとき
)
もかかって掃除をし、床板の隅ずみまで丹念に拭きあげた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
なに、構いませんよ。もともとお祭り見物で、
一刻
(
いっとき
)
半刻を
半七捕物帳:13 弁天娘
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かくして待つこと小
一刻
(
いっとき
)
——
右門捕物帖:22 因縁の女夫雛
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
“一刻”の意味
《名詞》
僅かな時間
一時の四分の一の時間。約30分。
頑固であること。一国。一徹。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“一刻”で始まる語句
一刻半
一刻者
一刻前
一刻後
一刻千金