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一分
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いつぷん
一時騒々しかつたのが、
寂寞ばつたりして
平時より
余計に
寂しく
夜が
更ける……さあ、
一分、
一秒、
血が
冷え、
骨が
刻まれる
思ひ。
一分、
二分、
間を
措いては
聞える
霰のやうな
音は
次第に
烈しくなつて、
池に
落込む
小※の
形勢も
交つて、
一時は
呼吸もつかれず、ものも
言はれなかつた。
……
其の
憂慮さに、——
懷中で、
確乎手を
掛けて
居ただけに、
御覽なさい。
何かに
氣が
紛れて、ふと
心をとられた
一寸一分の
間に、うつかり
遺失したぢやありませんか。
まゝよ、
一分でも
乘後れたら
停車場から
引返さう、それが
可い、と
目指す
大阪を
敵に
取つて、
何うも
恁うはじめから
豫定の
退却を
畫策すると
云ふのは、
案ずるに
懷中のためではない。