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あめみづ
先刻瀧のやうに
降注いだ
雨水は、
艇底に
一面に
溜つて
居る、
隨分生温い、
厭な
味だが、
其樣事は云つて
居られぬ。
兩手に
掬つて、
牛のやうに
飮んだ。
た※
渺々として
果もない
暗夜の
裡に、
雨水の
薄白いのが、
鰻の
腹のやうに
畝つて、
淀んだ
静な
波が、どろ/\と
来て
線路を
浸して
居さうにさへ
思はれる。
其翌日は、
漂流以來はじめて
少し
心が
落付いて、
例の
雨水を
飮み、
沙魚の
肉に
舌皷打ちつゝ、
島影は
無きか、
滊船の
煙は
見へぬかと
始終氣を
配る、けれど
此日は
何物も
眼を
遮るものとてはなく