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留
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とゞ
ふりがな文庫
“
留
(
とゞ
)” の例文
羅馬
(
ロオマ
)
に
七日
(
なぬか
)
、ナポリとポンペイに
二日
(
ふつか
)
と云ふ
駆歩
(
かけあし
)
の旅をして
伊太利
(
イタリイ
)
から帰つて見ると、予が
巴里
(
パリイ
)
に
留
(
とゞ
)
まる時日は残り
少
(
すくな
)
くなつて居る。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
更に見よ、新道の開通せられてより、更に旅客の此地を過ぐるものなく、當年
繁盛
(
はんせい
)
の驛路、今は一戸の旅舍をも
留
(
とゞ
)
めずなりたるを。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
深閑
(
しんかん
)
として、
生物
(
いきもの
)
といへば
蟻
(
あり
)
一
疋
(
ぴき
)
見出せないやうなところにも、
何處
(
どこ
)
となく祭の
名殘
(
なごり
)
を
留
(
とゞ
)
めて、人の
香
(
か
)
が
漂
(
たゞよ
)
うてゐるやうであつた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
彼
(
かれ
)
は
時々
(
とき/″\
)
椅子の
角
(
かど
)
や、
洋卓
(
デスク
)
の前へ
来
(
き
)
て
留
(
と
)
まつた。それから又
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
した。
彼
(
かれ
)
の
心
(
こゝろ
)
の動揺は、
彼
(
かれ
)
をして長く
一所
(
いつしよ
)
に
留
(
とゞ
)
まる事を許さなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
都
(
すべ
)
て
人
(
ひと
)
たる
者
(
もの
)
は
常
(
つね
)
に
物事
(
ものごと
)
に
心
(
こゝろ
)
を
留
(
とゞ
)
め、
世
(
よ
)
に
新
(
あた
)
らしき
事
(
こと
)
の
起
(
おこ
)
ることあらば、
何故
(
なにゆゑ
)
ありて
斯
(
かゝ
)
る
事
(
こと
)
の
出來
(
でき
)
しやと、よく
其本
(
そのもと
)
を
詮索
(
せんさく
)
せざるべからず。
改暦弁
(旧字旧仮名)
/
福沢諭吉
(著)
▼ もっと見る
それ故私は
唯
(
たゞ
)
代官町
(
だいくわんちやう
)
の
蓮池御門
(
はすいけごもん
)
、
三宅坂下
(
みやけざかした
)
の
桜田御門
(
さくらだごもん
)
、
九段坂下
(
くだんざかした
)
の
牛
(
うし
)
ヶ
淵
(
ふち
)
等
(
とう
)
古来人の称美する場所の名を挙げるに
留
(
とゞ
)
めて置く。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
壽阿彌は西村氏の菩提所昌林院に葬られたが、親戚が其名を生家の江間氏の菩提所に
留
(
とゞ
)
めむがために、此墓に
彫
(
ゑ
)
り添へさせたものであらう。
寿阿弥の手紙
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
墳墓も亦た Time の為に他の墳墓に投げらるゝなり、墳墓すら其迹を
留
(
とゞ
)
めず、
曷
(
いづく
)
んぞ預言者、英雄、詩人を留めんや。
頑執妄排の弊
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
一
臺
(
だい
)
の
腕車
(
わんしや
)
二
人
(
にん
)
の
車夫
(
しやふ
)
は、
此
(
こ
)
の
茶店
(
ちやみせ
)
に
留
(
とゞ
)
まつて、
人々
(
ひと/″\
)
とともに
手當
(
てあて
)
をし、
些
(
ちつ
)
とでもあがきが
着
(
つ
)
いたら、
早速
(
さつそく
)
武生
(
たけふ
)
までも
其日
(
そのひ
)
の
内
(
うち
)
に
引返
(
ひつかへ
)
すことにしたのである。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
待兼て居る成らん因て明
朝
(
あさ
)
は是非とも出立致し度と言けるに長庵
否々
(
いや/\
)
此通り雨も
降
(
ふつ
)
て居ることゆえ
明日
(
あした
)
は一日見合せて
明後日
(
あさつて
)
出立
(
しゆつたつ
)
爲
(
なす
)
べしと
留
(
とゞ
)
めけれ共十兵衞は是を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
月
(
つき
)
は
白晝
(
まひる
)
のやうに
明
(
あきらか
)
だが、
小蒸滊船
(
こじようきせん
)
の
形
(
かたち
)
は
次第々々
(
しだい/\
)
に
朧
(
おぼろ
)
になつて、
殘
(
のこ
)
る
煙
(
けむり
)
のみぞ
長
(
なが
)
き
名殘
(
なごり
)
を
留
(
とゞ
)
めた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
弱
(
よわ
)
い
者
(
もの
)
いぢめは
此方
(
こつち
)
の
恥
(
はぢ
)
になるから三五
郎
(
らう
)
や
美登利
(
みどり
)
を
相手
(
あひて
)
にしても
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い、
正太
(
しようた
)
に
末社
(
まつしや
)
がついたら
其時
(
そのとき
)
のこと、
决
(
けつ
)
して
此方
(
こつち
)
から
手出
(
てだ
)
しをしてはならないと
留
(
とゞ
)
めて
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
又
(
また
)
平仄
(
ひやうそく
)
が
合
(
あ
)
ひませんければなりません、どうも
斯様
(
かやう
)
なものを詩だといつてお持ち
遊
(
あそ
)
ばすと、
上
(
かみ
)
の
御恥辱
(
ごちじよく
)
に
相成
(
あひな
)
ります事ゆゑに、
是
(
これ
)
はお
留
(
とゞ
)
まり
遊
(
あそ
)
ばした
方
(
はう
)
が
宜
(
よろ
)
しうございませう。
詩好の王様と棒縛の旅人
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
また
丹後大地震
(
たんごだいぢしん
)
の
時
(
とき
)
は、
九歳
(
きゆうさい
)
になる
茂籠傳一郎
(
もかごでんいちろう
)
といふ
山田小學校
(
やまだしようがつこう
)
二年生
(
にねんせい
)
は
一家
(
いつか
)
八人
(
はちにん
)
と
共
(
とも
)
に
下敷
(
したじき
)
になり、
家族
(
かぞく
)
は
屋根
(
やね
)
を
破
(
やぶ
)
つて
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
したに
拘
(
かゝは
)
らず、
傳一郎君
(
でんいちろうくん
)
は
倒潰家屋内
(
とうかいかおくない
)
に
踏
(
ふ
)
み
留
(
とゞ
)
まり
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
そして、私はなぜか泣き出したいやうな寂しさを
覺
(
おぼ
)
えて、ひるまうとする、
崩折
(
くづを
)
れようとする自分をさへ見出さずにはゐられなかつた。が、そこで私は自分を
鞭
(
むち
)
打ちながら踏み
留
(
とゞ
)
まつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
ことに
樂浪郡
(
らくろうぐん
)
の
役所
(
やくしよ
)
のあつたところは、
今日
(
こんにち
)
の
平壤
(
へいじよう
)
の
南
(
みなみ
)
、
大同江
(
だいどうこう
)
の
向
(
むか
)
う
岸
(
ぎし
)
にあつて、
古
(
ふる
)
い
城壁
(
じようへき
)
のあともありますが、
支那
(
しな
)
から
派遣
(
はけん
)
せられた
役人
(
やくにん
)
がこゝに
留
(
とゞ
)
まつて
朝鮮
(
ちようせん
)
を
治
(
をさ
)
めてゐたのであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
患者
(
くわんじや
)
は
多
(
おほ
)
いのに
時間
(
じかん
)
は
少
(
すく
)
ない、で、
毎
(
いつ
)
も
極
(
ご
)
く
簡單
(
かんたん
)
な
質問
(
しつもん
)
と、
塗藥
(
ぬりぐすり
)
か、
※麻子油位
(
ひましあぶらぐらゐ
)
の
藥
(
くすり
)
を
渡
(
わた
)
して
遣
(
や
)
るのに
留
(
とゞ
)
まつてゐる。
院長
(
ゐんちやう
)
は
片手
(
かたて
)
で
頬杖
(
ほゝづゑ
)
を
突
(
つ
)
きながら
考込
(
かんがへこ
)
んで、
唯
(
たゞ
)
機械的
(
きかいてき
)
に
質問
(
しつもん
)
を
掛
(
か
)
けるのみである。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
瀧口入道と
法
(
のり
)
の名に浮世の
名殘
(
なごり
)
を
留
(
とゞ
)
むれども、心は
生死
(
しやうじ
)
の境を越えて、瑜伽三密の行の外、月にも露にも唱ふべき哀れは見えず、荷葉の三衣、秋の霜に堪へ難けれども、一杖一鉢に法捨を求むるの外
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
そつと
留
(
とゞ
)
めて、聞惚れて、なにをおもふや、うつとりと
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
春を
留
(
とゞ
)
むるすべを知る。
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
混合ふ見物人に交りながら裾を
搴
(
から
)
げて登る厭な気持の
後
(
あと
)
で、幾多の囚人の深い怨みを千古に
留
(
とゞ
)
めた
題壁
(
だいへき
)
の文字や絵を頂上の室に眺めた時は
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
もしくは
夫等
(
それら
)
から
棄
(
す
)
てられた。
學校
(
がくかう
)
からは
無論
(
むろん
)
棄
(
す
)
てられた。たゞ
表向
(
おもてむき
)
丈
(
だけ
)
は
此方
(
こちら
)
から
退學
(
たいがく
)
した
事
(
こと
)
になつて、
形式
(
けいしき
)
の
上
(
うへ
)
に
人間
(
にんげん
)
らしい
迹
(
あと
)
を
留
(
とゞ
)
めた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
あくる朝、友の強ゐて
留
(
とゞ
)
むるをさま/″\に言ひ解きて
程
(
てい
)
に
上
(
のぼ
)
る。旅の衣を着け、
草鞋
(
わらぢ
)
を
穿
(
うが
)
ち、
藺席
(
ござ
)
を
被
(
かうぶ
)
ればまた依然として
昨日
(
きのふ
)
の乞食書生なり。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
堀割の岸には
処々
(
しよ/\
)
に
物揚場
(
ものあげば
)
がある。
市中
(
しちゆう
)
の生活に興味を持つものには
物揚場
(
ものあげば
)
の光景も
亦
(
また
)
しばし杖を
留
(
とゞ
)
むるに足りる。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
手
(
て
)
が、
砂地
(
すなぢ
)
に
引上
(
ひきあ
)
げてある
難破船
(
なんぱせん
)
の、
纔
(
わづ
)
かに
其形
(
そのかたち
)
を
留
(
とゞ
)
めて
居
(
ゐ
)
る、三十
石
(
こく
)
積
(
づみ
)
と
見覺
(
みおぼ
)
えのある、
其
(
そ
)
の
舷
(
ふなばた
)
にかゝつて、
五寸釘
(
ごすんくぎ
)
をヒヤ/\と
掴
(
つか
)
んで、また
身震
(
みぶるひ
)
をした。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
せめての
腹愈
(
はらいや
)
しには、
吾
(
わが
)
鐵拳
(
てつけん
)
をもつて
彼
(
かれ
)
の
頭
(
かしら
)
に
引導
(
いんどう
)
渡
(
わた
)
して
呉
(
く
)
れんと、
驅出
(
かけだ
)
す
袂
(
たもと
)
を
夫人
(
ふじん
)
は
靜
(
しづか
)
に
留
(
とゞ
)
めた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
しかし隊の勇ましい
門出
(
かどで
)
を
余所
(
よそ
)
に見て、
独
(
ひと
)
り岡山に
留
(
とゞ
)
まるに忍びないから、
若
(
も
)
し戦闘が始まつたら、微力ながら応援いたさうと思つて、同じ街道を進んでゐるのだと云つた。
津下四郎左衛門
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ウーンと云う処へ、プツーリッと
復
(
ま
)
た一と
刀
(
かたな
)
あびせ、胸元へ
留
(
とゞ
)
めを差して、庄左衞門の着物で
血
(
のり
)
を
拭
(
ぬぐ
)
って鞘へ納め、小野庄左衞門の懐へ手を入れて見ましたが何もございません
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
頸飾
(
くびかざり
)
を草の上に
留
(
とゞ
)
め
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
御座りませんと
聞
(
きく
)
より
流石
(
さすが
)
の段右衞門も
愕然
(
ぎよつ
)
と
仕
(
し
)
て大いに驚きヤア然らば其時の
馬士
(
まご
)
めで有たか
扨々
(
さて/\
)
運
(
うん
)
の
強
(
つよ
)
き奴かな頭から
梨割
(
なしわり
)
にして其上に後日の
爲
(
ため
)
と思ひ
留
(
とゞ
)
め迄
刺
(
さし
)
たるに助かると言は
汝
(
なん
)
ぢは餘程
高運
(
かううん
)
な者なりと
呆
(
あき
)
れ果てぞ居たりける時に越前守殿
如何
(
いか
)
に段右衞門
金飛脚
(
かなひきやく
)
の彌兵衞
并
(
ならび
)
に馬士爲八を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
ヤング氏は
曾
(
かつ
)
て日本の音楽と俗謡とを研究する為に東京や薩摩に半年程
留
(
とゞ
)
まつて居た人で、驚く
許
(
ばか
)
り日本語が達者である。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
山巓なる夕照の光は次第に微かに、いつか全く消え失せて、終にはその尨大なる黒き姿を
留
(
とゞ
)
むるのみになりぬ。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
兄
(
あに
)
は打衝を受けた人の様に
一寸
(
ちよつと
)
扇の
音
(
おと
)
を
留
(
とゞ
)
めた。しばらくは
二人
(
ふたり
)
とも
口
(
くち
)
を
聞
(
き
)
き得なかつた。
良
(
やゝ
)
あつて
兄
(
あに
)
が
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
もとの処に仮普請の堂を
留
(
とゞ
)
めてゐるが、然し周囲の光景があまりに甚しく変つてしまつたので、これを尋ねて見ても、同じ場処ではないやうな気がする程である。
里の今昔
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
嬢様
(
ぢやうさま
)
は
帰
(
かへ
)
るに
家
(
いへ
)
なく
世
(
よ
)
に
唯
(
たゞ
)
一人
(
ひとり
)
となつて
小児
(
こども
)
と一
所
(
しよ
)
に
山
(
やま
)
に
留
(
とゞ
)
まつたのは
御坊
(
ごばう
)
が
見
(
み
)
らるゝ
通
(
とほり
)
、
又
(
また
)
那
(
あ
)
の
白痴
(
ばか
)
につきそつて
行届
(
ゆきとゞ
)
いた
世話
(
せわ
)
も
見
(
み
)
らるゝ
通
(
とほり
)
、
洪水
(
こうずゐ
)
の
時
(
とき
)
から十三
年
(
ねん
)
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も、
决
(
けつ
)
して
他國
(
たこく
)
には
渡
(
わた
)
すまじき
此
(
この
)
朝日島
(
あさひじま
)
の
占領
(
せんりよう
)
をば、
今
(
いま
)
より
完全
(
くわんぜん
)
に
繼續
(
けいぞく
)
して、
櫻木大佐等
(
さくらぎたいさら
)
の
立去
(
たちさ
)
つた
後
(
あと
)
と
雖
(
いへど
)
も、
動
(
うご
)
かし
難
(
がた
)
き
確證
(
くわくしよう
)
を
留
(
とゞ
)
め、
※一
(
まんいち
)
他國
(
たこく
)
の
容嘴
(
ようし
)
する
塲合
(
ばあひ
)
には、
一言
(
いちげん
)
の
下
(
した
)
に
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
然
(
しか
)
れども
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
きはたゞ一部、一篇、一局部の
話柄
(
わへい
)
に
留
(
とゞ
)
まるのみ。
其実
(
そのじつ
)
一般の婦人が忌むべく、恐るべき人生観は、婚姻以前にあらずして、其以後にあるものなりとす。
愛と婚姻
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私は毎年の秋
竹
(
たけ
)
の
台
(
だい
)
に開かれる絵画展覧会を見ての帰り道、いつも
市気
(
しき
)
満々
(
まん/\
)
たる出品の絵画よりも、
向
(
むかう
)
ヶ
岡
(
をか
)
の
夕陽
(
せきやう
)
敗荷
(
はいか
)
の池に反映する天然の絵画に対して杖を
留
(
とゞ
)
むるを常とした。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
代助の
頭
(
あたま
)
には今具体的な何物をも
留
(
とゞ
)
めてゐない。恰かも
戸外
(
こぐわい
)
の天気の様に、それが
静
(
しづ
)
かに
凝
(
じつ
)
と
働
(
はた
)
らいてゐる。が、其底には
微塵
(
みじん
)
の如き本体の分らぬものが無数に押し合つてゐた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
或
(
あるひ
)
は
傾
(
かたむ
)
き、また
俯向
(
うつむ
)
き、さて
笛
(
ふえ
)
を
仰
(
あふ
)
いで
吹
(
ふ
)
いた、が、やがて、
來
(
き
)
た
道
(
みち
)
を
半
(
なか
)
ば、あとへ
引返
(
ひきかへ
)
した
處
(
ところ
)
で、
更
(
あらた
)
めて
乘
(
の
)
つかる
如
(
ごと
)
く
下駄
(
げた
)
を
留
(
とゞ
)
めると、
一方
(
いつぱう
)
、
鎭守
(
ちんじゆ
)
の
社
(
やしろ
)
の
前
(
まへ
)
で、ついた
杖
(
つゑ
)
を
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
これ
袂
(
たもと
)
を
拂
(
はら
)
ふに
當
(
あた
)
りて、
其
(
そ
)
の
柔
(
やはら
)
かなる
膚
(
はだへ
)
に
珠
(
たま
)
の
觸
(
ふ
)
れて、
痕
(
あと
)
を
留
(
とゞ
)
めむことを
恐
(
おそ
)
れてなり。
知
(
し
)
るべし、
今
(
いま
)
の
世
(
よ
)
に
徒
(
いたづら
)
に
指環
(
ゆびわ
)
の
多
(
おほ
)
きを
欲
(
ほつ
)
すると、
聊
(
いさゝ
)
か
其
(
そ
)
の
抱負
(
はうふ
)
を
異
(
こと
)
にするものあることを。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
宮
(
みや
)
は、
報徳神社
(
はうとくじんじや
)
といふ、
彼
(
か
)
の
二宮尊徳
(
にのみやそんとく
)
翁
(
をう
)
を
祭
(
まつ
)
れるもの、
石段
(
いしだん
)
の
南北
(
なんぼく
)
に
畏
(
かしこ
)
くも、
宮樣
(
みやさま
)
御手植
(
おんてうゑ
)
の
對
(
つゐ
)
の
榊
(
さかき
)
、
四邊
(
あたり
)
に
塵
(
ちり
)
も
留
(
とゞ
)
めず、
高
(
たか
)
きあたり
靜
(
しづか
)
に
鳥
(
とり
)
の
聲
(
こゑ
)
鳴
(
な
)
きかはす。
此
(
こ
)
の
社
(
やしろ
)
に
詣
(
まう
)
でて
云々
(
しか/″\
)
。
城の石垣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
旅順
(
りよじゆん
)
の
吉報
(
きつぱう
)
傳
(
つた
)
はるとともに
幾干
(
いくばく
)
の
猛將
(
まうしやう
)
勇士
(
ゆうし
)
、
或
(
あるひ
)
は
士卒
(
しそつ
)
——
或
(
あるひ
)
は
傷
(
きず
)
つき
骨
(
ほね
)
も
皮
(
かは
)
も
散々
(
ちり/″\
)
に、
影
(
かげ
)
も
留
(
とゞ
)
めぬさへある
中
(
なか
)
に
夫
(
をつと
)
は
天晴
(
あつぱれ
)
の
功名
(
こうみやう
)
して、
唯
(
たゞ
)
纔
(
わづか
)
に
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
に
微傷
(
かすりきず
)
を
受
(
う
)
けたばかりと
聞
(
き
)
いた
時
(
とき
)
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
家に
仕
(
つか
)
ふる者ども、其物音に
駈附
(
かけつ
)
けしも、主人が血相に
恐
(
おそれ
)
をなして、
留
(
とゞ
)
めむとする者無く、
遠巻
(
とほまき
)
にして打騒ぎしのみ。
殺尽
(
ころしつく
)
せしお村の死骸は、竹藪の中に
埋棄
(
うづみす
)
てて、
跡弔
(
あととむらひ
)
もせざりけり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其
(
その
)
室
(
しつ
)
は当時
家中
(
かちう
)
に
聞
(
きこ
)
えし美人なりしが、
女心
(
をんなごころ
)
の
思詰
(
おもひつ
)
めて一途に家を明渡すが
口惜
(
くちをし
)
く、
我
(
われ
)
は
永世
(
えいせい
)
此処
(
このところ
)
に
留
(
とゞ
)
まりて、外へは
出
(
い
)
でじと、
其
(
その
)
居間に
閉籠
(
とぢこも
)
り、内より
鎖
(
ぢやう
)
を
下
(
おろ
)
せし
後
(
のち
)
は、
如何
(
いかに
)
かしけむ
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
遙
(
はる
)
かに
望
(
のぞ
)
んでも、
其
(
そ
)
の
枝
(
えだ
)
の
下
(
した
)
は、
一筵
(
ひとむしろ
)
、
掃清
(
はききよ
)
めたか、と
塵
(
ちり
)
も
留
(
とゞ
)
めぬ。
霰ふる
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
留
常用漢字
小5
部首:⽥
10画
“留”を含む語句
立留
逗留
踏留
留置
小留
歌留多
繋留
停留場
留守中
滯留
御逗留
取留
引留
留針
長逗留
呼留
留金
抑留
三留野
突留
...