また)” の例文
それは畑のまめの木の下や、林のならの木の根もとや、また雨垂あまだれの石のかげなどに、それはそれは上手に可愛かあいらしくつくってあるのです。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
女房かみさんは、よわつちやつた。可恐おそろしくおもいんです。が、たれないといふのはくやしいてんで、それにされるやうにして、またひよろ/\。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しくはまた苔の下に咽んでいた清水の滴りが岩間に走り出て、忽ち潺湲せんかんの響を立てながら一道の迅流となって駆け下りて行くように
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
これは高橋廉一れんいち氏のかんするところである。その結果がよいところから、東京電灯が玖珠くす飯田はんだ湯坪ゆつぼまた地熱研究所を設置している。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
られる都合つがふならばまたいままでのやうにお世話せわりにまする、るべくは鳥渡ちよつとたちかへりにぐも出京しゆつけうしたきものとかるくいへば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかこれきたはなしとか、交際かうさいとかとふものとはまたべつで、あま適切てきせつれいではりませんが、たとへば書物しよもつはノタで、談話だんわ唱歌しやうかでせう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
申さば父の越度をちどとなりまたいはずば吉三郎は殺さるべし兩方まつたきやうには何事もゆかざれども能々よく/\かんがへてこゝろしづかに双方さうはう無事になるやうの御答おこたへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ただ職人の積りで居るのだから、政治のかんがえと云うものは少しもない。自分でもようとも思わなければ、また私は出来ようとも思わない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
子供こどもには、はなしたあとでいろ/\のことはれて、わたくしまたむことをずに、いろ/\なことこたへたが、それをこと/″\くことは出來できない。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
B また俳句はいくだらう。先年せんねん電車でんしやのストライキのあつたとき、あれはなんとかつたつけな、めう俳句はいくやうなものをいてよこしたぢやないか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
また日本にほん小説せうせつによくあらはれる魔法遣まはふづかひが、不思議ふしぎげいえんずるのはおほくは、一はん佛教ぶつけうから一はん道教だうけう仙術せんじゆつからたものとおもはれる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
不可能ふかのうで、また其目的そのもくてきのみの大學だいがくでもなし博物館はくぶつくわんでもない、ゆゑ今一息いまひといきといふ岡目をかめひやう其所そこ突入とつにふするだけの餘地よちいでもい。
わたくしはこのときはじめて、ひやうのない疲勞ひらう倦怠けんたいとを、さうしてまた不可解ふかかいな、下等かとうな、退屈たいくつ人生じんせいわづかわすれること出來できたのである。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これ政府せいふ指導しだうまた消費節約せうひせつやく奬勵しやうれいわたつたとふよりも、むし國民自體こくみんじたい事柄ことがら必要ひつえうかんじてつたからだとおもふのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それからまたどく』としるしてあるびんから澤山たくさんめば、それが屹度きつとおそかれはやかれからだがいになるものだとふことをけつしてわすれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かつまた、それだけに特別の努力も払われたことはなく、大して新生面も附け加えられて来なかったように考えられてならぬのである。
FARCE に就て (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
九、 大地震だいぢしん場合ばあひには水道すいどう斷水だんすいするものと覺悟かくごし、機敏きびん貯水ちよすい用意よういをなすこと。またみづもちひざる消防法しようぼうほうをも應用おうようすべきこと。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そのまた返報には、綽名を付けたり、汚物を入口にぬすくったり、小便を引っかけたりするという。勿論、いいも悪いもわからない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
またわたくし申上もうしあげることにどんな誤謬あやまちがあるかもはかりかねますので、そこはくれぐれもただ一つの参考さんこうにとどめていただきたいのでございます。
ヂュリ 誓言せいごんにはおよびませぬ。また誓言せいごんなさるなら、わたしが神樣かみさまともおもふおまへをおけなされ、すればお言葉ことばしんじませう。
責任せきにんといふことおもききたいのもこれがめ、依頼心いらいしんおほいのもこれめ、また意志いし強固きやうこでないといふのもこれめであらうとおもひます。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
其父そのちちたたかひて(七三)くびすめぐらさずして、つひてきせり。呉公ごこういままた其子そのこふ。せふ(七四)其死所そのししよらず。ここもつこれこくするなり
此中四個の表面へうめんには額の部に「一の字」形隆まり有り、また兩方りやうはうみみへんより顎の邊へ掛けて「への字」を倒さにしたるかたの隆まりも有り。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
「そんなことはない。」わたしわらひながら否定ひていした。するとまたS、H訂正ていせいでもするやうに、「いや、わたしほうが……。」とこたへた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
しばらくたつてからおしなにはでおつぎがざあとみづんではまたあひだへだてゝざあとみづんでるのをいた。おつぎは大根だいこあらつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
長吉ちやうきちは月のに連れられて来た路地口ろぢぐちをば、これはまた一層の苦心、一層の懸念けねん、一層の疲労をつて、やつとの事で見出みいだし得たのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
が七になつても、ふねはひた/\と波止場はとばきはまでせてながら、まだなか/\けさうにない。のうちまたしても銅鑼どらる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
それからまたいくら信念の上に立った親愛同志の同棲者に対してでも、やはり些細ささいな観察や評価の眼はにぶらしてはなりません。
でもまず差当さしあたり牛込と浅草とを目差して先ず牛込へ行き夫々それ/″\探りを入て置てすぐまた車で浅草へ引返しました、何うも汗水垢あせみずくに成て働きましたぜ
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
いまのは勝負しょうぶなしにすんだので、また、四五にんのお役人やくにんが、大きなお三方さんぽうなにせて、その上にあつぬのをかけてはこんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
またなんじらのためにすべてのひとにくまれん。されどおわりまでしのぶものはすくわるべし。このまちにて、めらるるときは、かのまちのがれよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
といふのは梅廼屋うめのや落語社会らくごしやくわい寄合茶屋よりあひぢややでございますから……「有難ありがたうございます、どうか御囘向ごゑかうを願ひます、また参詣おまゐりいたします」とつて
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それともまた、その裏の林のなかで山鳩やまばとでもいたのだろうか? ともかくも、その得体えたいの知れぬアクセントだけがみょうに私の耳にこびりついた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
またある日、ぼくが、練習が済み、水を貰おうと、食堂へ降りて行くと、入口でぱったり、あなたと同じジャンパアの中村さんに、いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
彼らの祭り歌も舞の曲も、一切のニルヤセヂを挙げて、按司あじまた按司あじ、すなわち君主に奉献せしめよと、高唱せぬものはなかったのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
病気のためにも病床の慰みにもまた死後のはかりごとの足しにもならないこういう高価の大辞典を瀕死の間際まぎわに買うというは世間に余り聞かないはなし
とりんでってしまうと、杜松ねずまたもととおりになりましたが、手巾はんけちほねと一しょに何処どこへかえてしまいました。
けれどもすぐまた横眼でジムのテイブルの方を見ないではいられませんでした。胸のところがどきどきとして苦しいほどでした。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
よしまた私共が気づきませんでも、玄関を始めすっかり内側から締りがしてありますので、抜け出る道はないはずですの
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
(ロ)暖帶林だんたいりんまたは、櫧帶かしたい)。 このたいぞくする區域くいきは、沖繩縣おきなはけん中央ちゆうおう以北いほくから、四國しこく九州きゆうしゆう全部ぜんぶ本州ほんしゆう南部なんぶで、平均へいきん北緯三十六度ほくいさんじゆうろくど以南いなんです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
宗助そうすけ障子しやうじけたなり、少時しばらくさかなからつゆあぶらおといてゐたが、無言むごんまゝまた障子しやうじてゝもともどつた。細君さいくんさへさかなからはなさなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お辰かと珠運もだきしめてひたいに唇。彫像が動いたのやら、女が来たのやら、とわつたなく語らば遅し。げんまたげん摩訶不思議まかふしぎ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それからまた三日ばかりつて、天人が空をながめてゐますと、子良しりやうがこつそりと来て、そのそでを引いて、ささやきました。
子良の昇天 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
「なるほど」帆村はまた鴨田の方へ向き直った。「莫迦ばかげたことをおたずねいたしますが、このうわばみは人間を呑みますか」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
要するに地上に降る者には、みな何等なんらかの使命、また何等なんらかの目的があり、くして向上進歩を遂げんとするのである。
かつまた、弱り切ったお君の姿を見ると、このうえ駕籠に揺られて、けわしい山越しをさせることは考えものであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そうしてまたにわかの出来事に無数の悪魔が駈出して来た様な、にくにくしい土色した雲が、空低く散らかり飛び駈けって、引切ひっきりなしに北の方へ走り行く。
大雨の前日 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
如何いかなる事業じげふしたがふとも、體力たいりよくこれともなふて強健きやうけんならずば、ごと活動くわつどうするあたはず、また所期しよきの十一だもたつするあたはざるは、世上せじやうそのれいおほところなり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)