らふ)” の例文
らふたけてしかもひなに隱れ住む、すこし世帶やつれのした若い母が、窓のきはで機を織つてゐる夕暮れ、美しい都の姫がたづねてくる。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
想へば、氣高けだからふたけたる横笛をうきくさの浮きたる艷女たをやめとはひがめる我が心の誤ならんも知れず。さなり、我が心の誤ならんも知れず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
お秀のらふたけた美しさと、お千勢母娘のやり手らしい樣子を比べて、平次はもうこれだけの判斷をしてゐたのです。
むらさき一度いちどちうえつゝ、はしえた改札口かいさつぐちへ、ならんで入道にふだうくやうにして、かすか電燈でんとううつつた姿すがたは、みゝかくしも、のまゝ、さげがみの、黒髮くろかみながらふたけてさへえた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
心配さうに見張つた黒い美しい眸、象牙彫のやうに気高い鼻、端正な唇、皎い艶やかな頬、かうした神々しいらふたけた夫人の顔を見てゐると、彼女に嘘、偽りが、夢にもあらうとは思はれなかつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
照りわたるきらびのはえらふたさを「とき」に示せよ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
らふたき人よ、この時かしこを君
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
あてらふたきをみなごは
悪夢 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
お袖は取つて二十一、留守の兄彦太郎は二十八、らふたく美しく育つて貧しさにしひたげられながらも、人などを殺せさうな人柄でないことは平次にもよく判ります。
らふたき君がりたる胸小枕
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
なほらふたくもありながら
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
乱れし髪のらふたしや。
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
灯を持つて、入口に迎へた娘お筆の、らふたけて美しいのを見ると、平次もさすがに二の足を踏みました。
そのかみのらふたき風情ふぜい
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
あでなるかげや、らふたき
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
地味な銘仙の袷に、黒つぽい帶などを締めてをりますが、細面ほそおもての華奢立ちで、らふたけく見える品の良さ、これが百兩の支度金を狙ふ小便組とは、一體誰が氣がつくでせう。
寢起らしい不活發なところの微塵もない、爽やかな表情のうちにも、愛兒をうしなつた悲痛な隈があつて、らふたきばかりの美しさに、にじみ出る自然の愛嬌も世の常ではありません。
疋田ひつた鹿長襦袢ながじゆばんに、麻の葉の扱帶しごきを締めて、大きい島田を、少し重くかしげた、らふたけた姿は、ガラツ八が見馴れた種類の女ではありません。それはあまりに美しく、惱ましい姿だつたのです。
歌も踊りも、小娘の藝當で、大したものではありませんが、そのらふたけきばかりの美しさに平次も膽をつぶしました。江戸の娘、何んの某といふ中にも、これほどのは滅多にあるわけもありません。
これはまた、美しくもらふたき女で、巣鴨中に響いた容貌でした。
痛々しく伏せた眉、らふたけくかすむのも不思議な魅力でした。
下賤で育つたにしては、妙にらふたけた賢い女です。