こく)” の例文
……『古今註こきんちゅう』に、『鶴は千歳せんざいにしてそうとなり、二千歳にしてこくすなわ玄鶴げんかくなり。白鶴はっかくもまた同じ。死期を知れば、深山幽谷しんざんゆうこくにかくれてみずから死す』
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「山東のこく宋江です。張順さん、あなたのご実兄の張横さんとは、掲陽鎮けいようちんでお目にかかって、いろいろお世話になっています。どうか以後はお見知りおきを」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もうすっかり夜になり、山と谷と曠野と森と、谷川との世界がこく一色に、うるしのように塗りつぶされた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
穴の如く、その底よりは風の吹きづると思ふこく闇々あんあんたる坂下より、ものののぼるやうなれば、ここにあらば捕へられむと恐しく、とかうの思慮もなさでやしろの裏の狭きなかににげ入りつ。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は船着の石段に腰かけながら独り物思いに耽っていたが、折しも上流の方から一つの細長い、こくずんだ帆が薄光りに光る川面を下って来るのに気がついた。そして彼はばねのように飛上った。
其雙眼は迫り來るこく暗々あんあんの夜に閉ぢぬ。 310
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
こく魔術
虎の牙 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)