高峰たかね)” の例文
だせ永井、高峰たかねの花は登っていって折る人間のものだ、おまえは十万石の中老の子だぞ、相手とは身分が格段に違う、しっかりしろ伝七郎
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
秋にでもなって、朝ぼらけの山のに、ふと朝顔でも見えましたら、さてこそさてこそ高峰たかねの花と、合点がってんすれば済みます事。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかるに壮年の人よりこの涙を誘うもののうちにても、天外にそびゆる高峰たかねの雪の淡々あわあわしく恋の夢路をおもかげに写したらんごときにくものあらじ。
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
紅塵万丈の熱鬧ねっとう世界を遠く白雲緬邈めんばくの地平線下に委棄しきたって、悠々として「四条五条の橋の上」に遊び、「愛鷹あしたか山や富士の高峰たかね」の上はるかなる国に羽化登仙うかとうせんし去るのである。
謡曲黒白談 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たかくもわれさへにきみきなな高峰たかねひて 〔巻十四・三五一四〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「手前、お絹さんと言うと夢中だが、あれだけは諦めろよ、高峰たかねの花だ」
チベットの高峰たかねヶ原に出る月は
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ものいわぬ高峰たかねの花なれば、手折るべくもあらざれど、被の雲を押分けて月の面影洩出もれいでなば、﨟長ろうたけたらんといと床し。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうなるとおれのような旗本の四男坊には高峰たかねの花だから、いまのうちに酌をしてもらうとしよう」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
『いざさらば雪をいただ高峰たかね
(新字新仮名) / 国木田独歩(著)
高峰たかねへかかる雲を見ては、つたをたよりにすがりたし、うみを渡る霧を見ては、落葉に乗っても、追いつきたい。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
背後うしろから呼ぶやさしい声に、医王山いおうざんの半腹、樹木の鬱葱うっそうたる中をでて、ふと夜の明けたように、空み、気きよく、時しも夏のはじめを、秋見る昼の月のごとく、前途遥ゆくてはるかなる高峰たかねの上に日輪にちりんあおいだ高坂こうさか
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
朝なんざがけく雲の中にちらちら燃えるようなのが見えて、もみじに朝霧がかかったという工合でいて、何となく高峰たかねの花という感じがしたのに、賢君の丹精で、机の上に活かったのは感謝する。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)