骨骼こっかく)” の例文
欧羅巴ヨーロッパには、骨骼こっかくたくましい、実に大きな馬がいる。僕は仏蘭西フランスに上陸するや、ぐその大きな馬に気づいた。この馬は、欧羅巴の至るところで働いている。
玉菜ぐるま (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
もっともその驚き方を解剖して見るとみんな消極的である。第一あんなに背の高い人とは思わなかった。あんなに頑丈がんじょう骨骼こっかくを持った人とは思わなかった。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて虎もししも同じく猫属の獣で外貌は大いにちがうが骨骼こっかくや爪や歯牙は余り違わぬ、毛と皮が大いに異なるのだ。
正常な骨骼こっかくを内に蔵しているとも思えない胴腰、それらは大人としては不可能であっても、嬰児としては実に必然で、また実に仏菩薩にふさわしいのである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
単于ぜんうは手ずから李陵のなわを解いた。その後の待遇も鄭重ていちょうを極めた。且鞮侯そていこう単于とて先代の呴犁湖くりこ単于の弟だが、骨骼こっかくたくましい巨眼きょがん赭髯しゃぜんの中年の偉丈夫いじょうふである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
挨拶を受けた相手の名誉を顧慮しているのである。土蔵の裏手、翼の骨骼こっかくのようにばさと葉をひろげているきたならしい樹木が五六ぽん見える。あれは棕梠しゅろである。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
姙婦というものは、生理状態から変なものを喰べたがるものだ。この場合の彼女は、胎児の骨骼こっかくを作るために燐が不足していたので、いつもマッチの頭を喰べていたのだ。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いゝや、さうぢゃない、白堊はくあ紀のおほきな爬虫はちゅう類の骨骼こっかくを博物館の方から頼まれてあるんですがいかゞでございませう、一つお探しを願はれますまいかと、斯うぢゃなかったかな。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
もう五十を越えているらしい。一体にたくましい骨骼こっかくで顔はいつも銅のように光っている。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
アシカのひれや、獣の前足などはすべて同じ骨骼こっかくをもっていることを示し、ただ空中を飛んだり、水中を泳いだり、地面を歩いたりすることにより形がちがって来るのだと説いたのでした。
チャールズ・ダーウィン (新字新仮名) / 石原純(著)
おれはそう思って、現実に抗して現実の無意義と無内容とを観じようとすれば、現実はその骨骼こっかくばかりの機構を露呈して、かえっておれの無知を責めてかかる。おれはその背後に虚無を見る。
その説明としては「吾人の空間の骨骼こっかくは光線である」
口は小さく、あごも短い。色が白いから、それでも可成りの美少年に見える。身長骨骼こっかくも尋常である。
乞食学生 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いいや、そうじゃない、白堊紀はくあきおおきな爬虫はちゅう類の骨骼こっかくを博物館の方から頼まれてあるんですがいかがでございましょう、一つお探しを願われますまいかと、斯うじゃなかったかな。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼のもっとも嫌うのは羅漢らかんの様な骨骼こっかく相好そうごうで、鏡に向うたんびに、あんな顔に生れなくって、まあかったと思う位である。その代り人から御洒落おしゃれと云われても、何の苦痛も感じ得ない。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
これから察するところ、笛吹川はどこかの医学校の標本室から、骨骼こっかくを盗み出して来て、彼自身の身代りとして棺中に収めたのでしょう。ここいらも、彼の周到な注意ぶりが窺われます。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
岩兎は外貌が熟兎に似て物の骨骼こっかくその他の構造全く兎類と別で象や河馬かば等の有蹄獣の一属だ。この物にも数種あってアフリカとシリアに産す(第三図は南アフリカ産ヒラクス・カベンシス)
その骨骼こっかくといい、頭恰好といい、ひとみのいろといい、それから音声の調子といい、まったくロンブロオゾオやショオペンハウエルの規定している天才の特徴と酷似こくじしているのである。
彼は昔の彼ならず (新字新仮名) / 太宰治(著)
自宅に風呂を買わない時分には、つい近所の銭湯に行ったが、其所そこに一人の骨骼こっかくたくましい三助がいた。これが行くたんびに、奥から飛び出して来て、流しましょうと云っては脊中せなかこする。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
斯うだ、斯うだ、ちがひない。さあ、ところでこゝは白堊はくあ系の頁岩けつがんだ。もうこゝでおれは探し出すつもりだったんだ。なるほど、はじめてはっきりしたぞ。さあ探せ、恐竜の骨骼こっかくだ。恐竜の骨骼だ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)