青味あおみ)” の例文
袖付やおくみの皺が、苔でも置いたようなしっとりした青味あおみたにをつくって、いうにいえないいい味わい。……
姦(かしまし) (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ぽうへ狂気のごとくどなりつけた。そのくせ、かれじしんからしてころもはさかれ目は血ばしり、おもては青味あおみをおびて、よほど度を失っているのだからおかしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただしこれは姿すがたのある天狗てんぐいてもうしたのでございます。天狗てんぐなかには姿すがたたないのもございます。それは青味あおみがかったまるたまで、直径ちょくけいは三ずんくらいでございましょうか。
おんなは、むしろおとこはや漏斗じょうごものくちからいたので、青味あおみんだ、うつくしいしずくがまだのこっていて、かえってますにうつされたのだけそんをしたようなすらこったのです。
火を点ず (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがてのことに、青味あおみびたドロンとした液体が、クネクネとまるで海蛇うみへびの巣をのぞいたときはこうもあろうかというような蠕動ぜんどうを始めました。なんという気味のわるい生物でしょう。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、寧子が手ずから一わんの汁に入れて良人の食膳に供する青味あおみともなり、時には、田楽でんがくにした茄子の新鮮さを、秀吉からめてもらえるうれしさにはなるのであった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袖付やおくみの皺が苔でも置いたようなしっとりした青味あおみの谷をつくって、いうにいえないいい味わい……帯はね、蝦夷錦の金銀を抜いて、ブツブツの荒地にしたあとへ、モガルの色糸で
猪鹿蝶 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
と、彼女は、微笑びしょうをもって、それへはるかな注意ちゅういをおくっている。——すると、その灯はえて、つぎにはやや青味あおみをもった灯が、ななめに、雨のようなすじを三たびかいた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)