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露國
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ロコク
何ぞ
醉漢の
心中を
暴露するの
妙なる。
更に
進んで
我妻を
説き
我娘を
談じ、
娘が
婬賣する
事まで、
慚色なく
吐き
出づるに
至りては
露國の
社界亦た
驚くべきにあらずや。
ドスト
氏は
躬ら
露國平民社界の
暗澹たる
境遇を
實踐したる
人なり、
而して
其述作する
所は、
凡そ
露西亞人の
血痕涙痕をこきまぜて、
言ふべからざる
入神の
筆語を
以て、
虚實兩世界に
出入せり。
露國は
政治上に
立て
世界に
雄視すと
雖もその
版圖の
彊大にして
軍備の
充實せる
丈に、
民人の
幸福は
饒ならず、
貴族と
小民との
間に
鐵柵の
設けらるゝありて、
自からに
平等を
苦叫する
平民の
聲を
起し
余が
前號の
批評にも
云ひし
如く罪と罰とは
最暗黒の
露國を
寫したるものにてあるからに
馬琴の
想像的侠勇談にある
如く
或復讎或忠孝等の
故を
以て
殺人罪を
犯さしめたるものにあらざること
分明なり。