そゝ)” の例文
昨日は英語で一番綴りの長いことばの事を言つたが、今日は林檎の冤罪をそゝいだおけに、世界中で一番長い名前をお知らせする。
其方共儀むこ夫等をつとら災難さいなんを歎き艱難辛苦かんなんしんくの上公儀巡見使じゆんけんしうつたへ出申立明了あきらかなるにより善惡判然と相あらはれ九助の寃罪ゑんざいそゝぎし信義しんぎ貞操ていさうの段厚くほめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その恥辱を上役のお方がそゝいで下さることと心得ましたを、かえって御打擲に遇いまして残念でござりまする、只今帰るでござる、これ女ども袴と腰の物を是へ持て
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかし只一つ言ひたいのは、私が幼い時から、刑死した父のゑんそゝがうと思ふ熱烈な情に駆られて、専念に学問を研究することが出来なかつたといふ事実である。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
将門が都から帰つて来て流石さすがに謹慎して居るさまを見るに及んで、怨を晴らし恥辱をそゝぐは此時と、良兼等は亦復また/\押寄せた。其年八月六日に下総境の例の小貝川の渡に良兼の軍は来た。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
この娘に取つては、父の命を救ふことも大事なら、家中の者から、父の命を狙つて居ると思はれて居る、許婚の秋月勘三郎のゑんそゝいで貰ふことも、更に大事だつたに違ひありません。
かの詞にはかく答ふべかりしなり。かのはづかしめをばかくそゝぐべかりしなり。我血は湧き上りたり。無上の快樂に無比の慙恨打ち雜りて、我は睡ること能はざりしが、曉近くおもひの外におだやかなる夢を結びぬ。
アラビヤの恥、そゝげかし!……
この禍福とそれに伴ふ晦顕くわいけんとがどうして生じたか。私はそれをきはめて父のゑんそゝぎたいのである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
取立ての金を三十兩ばかり持つて居る筈ですから、フト魔がさして持逃げしたのではあるまいかと疑はれましたが、翌る朝龍閑橋りうかんばしの側から定吉の死骸が上がつて、その汚名だけはそゝがれました。
致され萬一申開き相立ざる時は人手はかりぬ我自らに手討に爲すぞ惡名あくみやうを付られては最早男は立ず急度きつと相糺あひたゞして汚名をめいそゝげよと親も聲を掛るゆゑそれより双方さうはう爭ひ立ち既に喧嘩けんくわにも成んと人々は手にあせ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
顔に塗られた泥を洗ふやうに、積極的に父のゑんそゝぎたいと云ふのが、私の幼い時からの欲望である。幼い時にはかう思つた。父は天子様のために働いた。それを人が殺した。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)