附物つきもの)” の例文
能楽のうがくには舞というものが附物つきものである。悲惨な人生を描いたものであっても、その悲惨に終った主人公が必ず(多く)舞を舞う。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
職業しやうばいではありません。職業しやうばいではとても殺生は出来ません。料理は芸の一つで、芸には工夫とそれに附物つきものたのしみといふものがありますからね。」
その時代には、絞刑はタイバーンで行われていたので、ニューゲートの外側のかの街は、その後にそこの附物つきものとなった一の不名誉な醜名を、まだ受けてはいなかった。
如何いかいやしうても大事だいじない、一思ひとおもひにはふいか?……「追放つゐはう」……「追放つゐはう」でころさるゝのはおれいやぢゃ! おゝ、御坊ごばうよ、追放つゐはうとは墮獄だごくやからもちふることばうなごゑ附物つきもの
「相變らず大きなことばかし云つてるな。併し貧乏は昔から君の附物つきものぢやなかつた?」
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
しかしこの種の軽蔑に、ある程度の不気味はいつでも附物つきものであった。ことにそういう階級にらされない女、しかも経験に乏しい若い女には、なおさらの事でなければならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ま、ま、めしあがれ、熱いところを。ね、御緩ごゆっくり。さあ、これえ、お焼物やきものがない。ええ、間抜けな、ぬたばかり。これえ、御酒ごしゅ尾頭おかしら附物つきものだわ。ぬたばかり、いやぬたぬたとぬたったおんなだ。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
附物つきもののお前方も助かるのは、お后の思召次第だ。8955
博士は水つぽい吸物すひものすゝりながら、江戸つ子に附物つきものの、東京以外の土地は巴里パリーだらうが、天国だらうが、みんな田舎だと見下みくだしたやうな調子で
蕪村が宵つ張なのに何の不思議もない筈だ、彼は画家ゑかきであると共に、夜更よふかしが附物つきものの俳諧師でもある。
空手からてで物を貰ふ者に附物つきものの愛嬌笑ひを惜し気もなく小説家の卓子テエブルの上にぶち撒けた。
すると、池田氏は物を呉れる者に附物つきもの鷹揚おうやう態度ものごしで、ポケツトに手を突込んだと思ふと、何か知らつかみ出して黙つて相手の掌面てのひらに載せて呉れる。——見ると、使ひ古しの郵便切手である。
ちやうどジヨセフ・チエムバレンに一眼鏡モノクル附物つきものになつてゐるのと同じやうに。