閨秀けいしゅう)” の例文
久保氏夫人よりえさんは、落合直文門下の閨秀けいしゅう歌人として知られた方で、娘時代から鏡花先生の愛読者であった関係から親交があったのです。
泉鏡花先生のこと (新字新仮名) / 小村雪岱(著)
空色の香紫欄花ジロツフレ瑠璃草ミオティスで作った鳥籠の中でさえずるのは駒鳥にあらで、水仙黄ナルシス・ジョオヌの散歩服に黒天鵞絨ビロウドの帯をしたる美貌の閨秀けいしゅう詩人オウジエ嬢。
裂目だらけな絹の衝立ついたてを照らし、画架にかかった出来かけの作品を照らし、その前にいる閨秀けいしゅう画家と詩人とを照らしていた。
或日一行にともなわれて孤踏夫人なる女人のもとへ行った。これは痴川の女であって閨秀けいしゅう画家であるが、三十五で二十四五に受取れる神経質な美貌であった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
で、未来の閨秀けいしゅう作家は学校から帰って来ると、机に向って文を書くというよりは、むしろ多く手紙を書くので、男の友達も随分多い。男文字の手紙も随分来る。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
閨秀けいしゅう画家のセザンヌと言われた、喜田川志津子きたがわしづこさんのことを、多かれ少なかれ皆様は御存じの事と思います——あのインディアン・ブルーの勝った深い海の色
閨秀けいしゅう画家の伊藤美代乃女史は、秋田の出身であるが、その女史が小さい時、それは晩春はるさきの事であった。
虎杖採り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あの文金だがね、何だか見たようでいて、さっきから思出せなかったが、髑髏が言うので思出した。春頃出たんだ、『閨秀けいしゅう小説』というのがある、知ってるかい。」
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この閨秀けいしゅうの傑作がつづりだされようと誰が知ろう、それよりもまた、その文豪が、朝は風呂敷包みを背負って、自ら多町たちょうの問屋まで駄菓子を買出しにゆき、蝋燭ろうそくを仕入れ
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これが若い時は閨秀けいしゅう詩人で鳴らした紅蘭こうらん女史であった。紅蘭が無月の洒落しゃれをいっても、奥で、笑いもせずにいる霊芝れいしみたいな人間は、むろん慷慨こうがい詩家、梁川星巌やながわせいがんなのである。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は通りかかった一人の婦人の方へ行って、握手をして、笑顔えがおを見せた。それからまたもどって来た。そして、あれは激しい肉感的な小説で有名になった閨秀けいしゅう作家だと説明した。
次女はもったい振り、足の下の小さい瀬戸の火鉢に、「梅花」というこうを一つべて、すうと深く呼吸して眼を細めた。古代の閨秀けいしゅう作家、紫式部の心境がわかるような気がした。
ろまん灯籠 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この閨秀けいしゅうの詩人をして舌を捲かせていることはいっこう御存じなく、例の般若はんにゃの面は後生大事に小脇にかかえて、なおしきりに月にうそぶきながら、更に続々となんらかの感興が咽喉のどをついて出るのを
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
美しい閨秀けいしゅう作家としての彼女は、ごろでは、外務省書記官である夫君の影を薄く思わせる程も、有名になっていた。彼女の所へは、毎日の様に未知の崇拝者達からの手紙が、幾通となくやって来た。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「英国の閨秀けいしゅう作家だ。十七世紀の」
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「白ばら」は最初はじめての閨秀けいしゅう作家号にるし、「小町湯」や美妙との合作もつづいて発表された。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
収入満とうなるといえども、常住の寡慾かよくもやらで、慈善のよくは極り無く、貪るばかりに取込みても人に施すにはいまだ足らずと、身をにし、骨を折る、賢媛けんえん閨秀けいしゅう難有ありがたさよ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
門司の閨秀けいしゅう作家田中みの子にあてたもので、表向きは上品な文句が並べてあるが、その底に小意地の悪さが浸みこんでいておもしろい。この両女史はかなり激しい競争相手であったのだろう。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
話は閨秀けいしゅう作家月旦になり、その容色品評に及び、貢太郎老は
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また……ああ惜しいかな、前記の閨秀けいしゅう小説が出て世評一代を風靡ふうびした、その年の末。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当時フランス文壇に異彩を放った閨秀けいしゅう作家で、ショパンよりは年上であり、その性格、肉体、趣味、ことごとくショパンと対蹠たいせき的な存在であったが、ゆくりなき奇縁が、天才ショパンと結びつき
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)