門札かどふだ)” の例文
が、表のこの町内は、おれとこと、あと二三軒、しかも大々とした邸だ。一遍通り門札かどふだを見ても分る。いやさ、猫でも、犬でも分る。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
拔出ぬけいだし麹町三丁目へ到り其所そこか此所かと尋ぬるうちに門札かどふだに村井と表名へうめいの有りければ心嬉こゝろうれしく爰が長庵のたくにて小夜衣はさぞ待詫まちわびつらんと玄關形げんくわんかたちの履脱くつぬぎへ立入て案内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたくしは今の清大園せいたいゑんの近所に「石田巳之介」と云ふ門札かどふだが懸けてあつたやうに想像する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
門札かどふだなどを読みありくかな
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
西の内二枚半に筆太に、書附けたる広告の見ゆる四辻よつつじへ、いなせ扮装いでたちの車夫一人、左へ曲りて鮫ヶ橋谷町の表通おもてどおり、軒並の門札かどふだを軒別にのぞきて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし達者でい、どうした、と聞くと、まあ、お寄んなさいまし、すぐそこが内だ、という二階家でさ。門札かどふだに山下賤、婆さんの本名でしょう。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「じゃ、お内のお嬢さんは柳屋さんというんですね、屋号ですね、お門札かどふだの山下おしずさんというのが、では御本名で。」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ねがいだ、お願だ。精霊大まごつきのところ、お馴染のわし媽々かかあ門札かどふだを願います、と燈籠を振廻ふりまわしたもんです。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「余り強情を張りなさりゃ仕方がない、姉さん、お前さんの身体からだに手を懸けますよ。」と断って立懸たちかかる、いずれも門札かどふだを出した、妻子もあろうという連中であるから
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その黒目勝なのをみはったお妙は、鶯の声を見る時と同一おんなじな可愛い顔で、路地に立ってみまわしながら、たちばなに井げたの紋、堀の内講中こうじゅうのお札を並べた、上原かんばらと姓だけの門札かどふだながめて
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何でも持って来いという意気づくりだけれども、この門札かどふだは、さるたぐいの者の看板ではない、とみというのは方違いの北のくるわ、京町とやらのさるうちに、博多はかたの男帯をうしろから廻して、前で挟んで
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今度こんど、お門札かどふだのぞいてませうでございます。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
門札かどふだを見て
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)