配偶つれあい)” の例文
お静は思わず顔を赤らめて、襟に顎を埋めましたが、おとなしいようでも岡っ引の配偶つれあいは、それ位の技巧が無いとは言い切れません。
銭形平次捕物控:239 群盗 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
長押なげしの上には香川景樹かげきからお婆さんの配偶つれあいであった人に宛てたという歌人うたよみらしく達者な筆で書いた古い手紙が額にして掛けてある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このビール樽はお父さんの従姉いとこ配偶つれあいで、川島さんという若松の石炭商だった。お父さんは一同に然るべく紹介を済ませてから
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もって、よう仇討あだうちをなされました。見ればお優しくて気高くて、それでいて勇気もおありなさる。紋也様とはよいお配偶つれあい、私などおよびもつきませぬ
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人の言うことを気にしたり、侮蔑ぶべつに腹を立てたりしてはならぬ。死んだ配偶つれあいがそなたをはずかしめたことはいっさい許して、真底から仲なおりをするのじゃ。
「いろいろ御親切にありがとう存じます。なに配偶つれあいさえ生きておりますれば、一人で——こん——こんな心配は致さなくってもよろしい——のでございますが」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お爺さんのお配偶つれあいなら、お婆さまではありませんか。そろそろさういふお心掛けになられたら?……」
垂水 (新字旧仮名) / 神西清(著)
そして自分も配偶つれあいがあったがとうとうその病気で死んでしまって、その後自分も同じように悪かったのであるが信心をはじめてそれでとうとう助かることができたこと
のんきな患者 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
それに又、配偶つれあいのオナリという女が亭主に負けない口達者のガッチリ者で、村の女房達が第一の楽しみにしている御大師様や、妙法様の信心ごとの交際つきあいなぞには決して出て来ない。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
旦那の前でこんな事を云って誠に済みませんが、せん配偶つれあいの宇之助さんに誠によく似て居りますよ、どうもマア本当に思い掛けない事で、夢のような心持です、一寸立って見なよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
然も紙屑屋かみくずやとさもしき議論致されては意気な声もききたくなく、印付しるしつき花合はなあわまけても平気なるには寛容おおようなる御心おこころかえって迷惑、どうして此様このようめす配偶つれあいにしたかと後悔するが天下半分の大切おおぎり
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「間違いじゃございません。母親のお加世様とお配偶つれあいの関様が御覧になって、たしかに内匠様に相違ないとおっしゃるのですから」
「お母さんが○○子爵夫人の妹さんの配偶つれあいの姪だから、親類としては遠いけれど、義弟と同じ会社に勤めているから、極く懇意だ。式にも来てくれた」
村一番早慶戦 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それはなんという聖い子じゃ! 回向をして進ぜよう、回向をして進ぜるよ! それからそなたの悲しみも祈祷きとうの中で告げてあげようし、配偶つれあいの息災も祈ってあげよう。
どうしてその婦人のことが、こんなに私たちの間にうわさにのぼったかというに、十八年も前にくなった私のおいの一人の配偶つれあいで、私の子供たちから言えばかあさんの友だちであったからで。
分配 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
此方こちら様などは結構でいらっしゃいますが、私は——もし彼人がいつまでも病気だ病気だと申して嫁を貰ってくれませんうちに、もしもの事があったら、草葉の陰で配偶つれあいに合わす顔がございません。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お待たせいたしました。銭形の親分さんだそうで、ちょうどいい方にお目にかかりました。私は大川屋の配偶つれあいで、米と申します」
尤も九州の叔母の配偶つれあいに陸軍大佐がある。清之介君は心細さの余りこの人に列席して貰おうと思って、再三懇願したけれど、遠隔の地とあって到頭来てくれなかった。
女婿 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あの子が後に残していったものを、一つ一つ広げて見ては、おいおい泣くのでございます。そこで配偶つれあいのニキートカに、どうか巡礼に出しておくれと申しましたのでございます。
切ればその親も子も配偶つれあいも、路頭に迷うことは判り切っております。これが増長慢心した泥棒風情ふぜいの芸事のせいで済むでしょうか
妹思いのお母さんはこの二人の配偶つれあいがそれ/″\発展成功して行くのを喜ぶと同時に、兄弟は他人の初まりといって自然競争心があるから、お父さんの煮え切らないのを歯痒はがゆがるけれども
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
振り返ると、無口な源助も、その配偶つれあいのお冬も、はねっ返りのお徳も、妙に気色ばんで、平次の後ろへ詰め寄っているではありませんか。
殿様御手に掛けられた上、弟内匠まで——配偶つれあいのことで斬られるようなことになっては、志賀家代々の御先祖にも相済みません
こういうわけでさ、相沢半之丞は三年前に配偶つれあいに死なれて、それから知行所から呼んだ下女のお組というのをめかけにしていた。
丁稚でっちの定吉は使いに行って留守、腹ちがいの姉のお専はお勝手に、その配偶つれあいの福之助は、階下の自分の部屋にいたそうです。
「そのために配偶つれあいの私の母とも別れ、娘の私だけ引取って、母がその日の暮しにも困っているのを知りながら、十年越し仕送りもしませんでした」
「ありますよ。小さい宝物蔵で、奉公人は足も踏み入れませんが、この間から御用人の堀様とそのお配偶つれあいのお滝さんがちょくちょく入るようで——」
「とんでもない。あの若主人が、死んだ番頭の配偶つれあいに、百も出すものですか。あんな因業な人間はありゃしません」
見張るつもりで、番頭さんの配偶つれあいのお咲さんが、世帯を畳んでこの家へ入り込んで来たのだろう。主人のお米さんはそれが気に入らなくて、お咲さんを
盗られてしまっては、配偶つれあいが死んでから十五年の間の、骨をけずるような苦労も、みんな無駄になってしまいました
「船河原町の朝吉の野郎は世辞せじが良いし、あの配偶つれあいのお森は馬鹿な愛嬌あいきょうだ、八さん八さんと下にも置きませんよ」
「まだありますよ、橋場で殺された佐太郎は、勿体なくも主人の配偶つれあいのあのお染さんに夢中だったんですってね」
「殺された半兵衛とお前は伯父姪でも何んでもないとすると半兵衛はお前を配偶つれあいにする気じゃなかったのか」
「待て待て。お秋は勘違いをしているのだ、俺には、鹿の子という、まだ祝言はせぬが、定まる配偶つれあいがある」
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「これがもとの配偶つれあいの大橋伝中に知れたが最後、私は一刻も半刻も無事には生きていられません。——あの人はどんなにこわい人間か、親分もよく御存じのはず」
顔見知りの久蔵、——死んだ隠居の配偶つれあいの妹の亭主、男芸者などをしていた、評判の宜しくない五十男が、眼顔で八五郎を人気のない奥の一間へ導き入れるのでした。
お銀はかつて自分の配偶つれあいだった巨盗大橋伝中のことをいうとき、一種の不思議な表情をするのです。
そう言って迎えてくれた中年の夫人は、昨年猫間ヶ淵で死んだ潜水夫の配偶つれあいで、お高さんという——、白い割烹着に、引詰めた束髪といった、思いの外東京風の女です。
水中の宮殿 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
主人の彦七はまだ四十二三、頑丈そうな身体と、弱そうな神経を持った典型的な旦那衆で、検屍が無事に済んで、改めて配偶つれあいうしなった悲嘆にさいなまれている様子です。
お城大工の柏木藤兵衛は、早く配偶つれあいを失って娘のお勇一人を相手に、淋しく暮していたのです。
配偶つれあいは五年前に亡くなりましたが、たった一人のせがれ三之助さんのすけは、年寄りっ子の我儘わがまま育ちで、悪遊びから、とうとう勝負事にまで手を出すようになり、金看板のやくざ者になって
近所で聞いてみると、大川屋の主人というのは、働き盛りの四十男ですが、早く配偶つれあいを失い、先年吉原で馴染を重ねた華魁おいらんを請出して、親類の承諾を得て後添いに直しました。
「他じゃない、番頭さんの配偶つれあい——お咲さんは確か、元立派な芸人だったはずだね」
「それ見るがいい。お前の配偶つれあいは、その御家人喜六と、もう一人の年増に殺されたんだ。今夜は俺のところへまで毒酒を持込みやがったよ。放っておくと何をやり出すかも解らない」
あの娘は、——亡くなった私の配偶つれあいの連れっ娘ですが、あれは鬼でございました。
お粂が自分から飛出せば、菊之助とお勇はちょうど良い配偶つれあいじゃないか。二人一緒になれば、従兄妹いとこ同士で越前屋が立てられる。勝造は娘の出世になることだから、自然遠のくだろう。
「有難う、眼の不自由な人にしちゃ良いたしなみだね、——お前さん配偶つれあいは?」
配偶つれあいのお市というのは、素人しろうとではなかったというところまで判っております。
好きで配偶つれあいにしたというだけあって、この女にはなんとなく、気の知れない仇っぽさと、浮気らしいところの匂うのは、はじめて応対する平次にまで、焦立いらだたしいこびを感じさせるのでした。
小三郎さんは父さん(久兵衛)の本当の子ですが、母親は深川の芸者で、親類の手前や、配偶つれあいの思惑があったので、誰にも知らさずに、船頭の浪五郎という人に、お金をつけてやりました。